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nn5n: scp-745-JP 日奉樹
EuclidSCP-745-JP 日奉樹Rate: 22
SCP-745-JP
Scp-745-jp.jpg

SCP-745-JP(収容以前)

アイテム番号: SCP-745-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-745-JPはサイト-8115の対時間異常収容房い-1に収容され、設置したXACTS1は月毎に整備されます。SCP-745-JPは基本的にはレベルⅢ過去改変能力者と同様の規定された収容環境が与えられますが、筆記用具と著作物の提供は許可されません。SCP-745-JPには如何なる形であっても指定された格納エリア外での思考の伝達は行わせないように努めてください。現在SCP-745-JPを用いた実験には碓氷博士の事前の承認が必要です。

説明: SCP-745-JPは収容以前までは日奉樹(Isanagi Tatsuki)として知られていた日本人男性です。7歳の時に養子として引き取られるまでは児童養護施設にて育ち、収容当時(2013/09/12)は26歳だったと記録されています。収容後の精神鑑定では「演技性人格障害」の可能性があると診断されていますが、それと後述の異常性を除けば精神肉体共に通常の人間と変わりありません。
SCP-745-JPは世間的には████関数の一般化や、████████の定理の研究などで多くの業績を生み出し、若くして世界的に注目されていた数学者の一人です。2013年4月に████予想を単独研究で証明し、国際数学連合から異例の特別賞を受賞したことで広く知られています。現在は収容に伴ってカバーストーリー「虚血性心疾患による急死」が流布されており、公的には死亡しています。

その異常性はSCP-745-JPが既存の著作物2を「剽窃」することで発生します。この場合の剽窃とはSCP-745-JPが対象となるものの写し(SCP-745-JP-1と識別)を作成し、「SCP-745-JP-1は自身が独自に考え出したものである」といった旨を何らかの形で他者に提示することです。SCP-745-JPが剽窃を行うと、対象となった著作物やアイディアなどはその時点で「今まで存在していなかったもの」となるように過去改変が行われます。SCP-745-JPとSCP-745-JP-1だけはその改変に伴う再構築の影響を受けません。この能力の対象となるのは人の手で作られたものに限られるようですが、確実な研究データが得られておらず3、対象となるものの条件などは未だ不明瞭です。しかし、過去の事例からこの能力は対象の「写し(SCP-745-JP-1)」と、他者への「提示」が発動に必要不可欠であると決定付けられています。加えて、過去改変の効果流の起点となるのはSCP-745-JP本体であることが収容後の検査で判明しており、現在はこれらの条件を前提にした特別収容プロトコルが適用されています。

2009年の時点でSCP-745-JPによるものと思われる過去改変は、財団の時空間異常制御部門に検知されており、世界規模の起点捜索が実施されていました。2013年9月に過去改変前後記録比較調査の導入によって異常起点と特定され即座に回収が行われました。

補遺1: SCP-745-JPは財団の標準数学適正試験にて112点4を記録しました。

補遺2: 文書:745-JP/インタビューログ群

745-JP/インタビューログろ-1 — 日付2013/██/██
過去改変前記録によればインタビュー対象のウィズダム氏は、SCP-745-JPの過去改変がなければ████予想の証明を最初に宣言していた人物です。

日付: 2013/██/██
対象: 男性 ネイル・ウィズダム氏(当時42歳、オックスフォード大学教授)
インタビュアー: エージェント・ジェイワディナ


《記録開始》

インタビュアー: 日奉氏が証明した████予想についてお話頂けますか。

ウィズダム氏: ええ。私が数学者の道を歩んだのは、10歳ころに████予想と出会ったのがきっかけでした。……いえ、今はもうイサナギの定理と呼ばれているものですが。……とにかく、300年以上も誰も解くことのできなかった難関に私は強く憧れた。████予想の研究はその頃から始めていましたが、証明に本核的に乗り出したのは今から9年前のことです。

インタビュアー: あなたが████予想の研究に取り組んでいることは、どのメディアにも言及されていませんが、そのことについては?

ウィズダム氏: それは私がその研究を秘密にしていたからです。日奉氏と同じ単独研究だったんです。告知なしに████予想を証明したと宣言して世界を驚かせたかった……おそらく、日奉氏も同じことを考えていたんでしょう。後に知った彼の研究環境が私のそれとほとんど同じでしたから。

インタビュアー: 研究はどの程度まで進みましたか。

ウィズダム氏: [少し間が空く]嘘のような話なのですが。……証明は私の頭の中ですでに完成していました。後はペンをとって紙を敷き、それを形にするだけだった。……あの時は本当に、冗談抜きで、興奮で頭が爆発しそうだった。なにせ、無数の数学者が挑んで敗れ去っていったあの████予想に、この私がとどめを刺すことができると強く確信できた瞬間だったのですから。……ですが、ちょうどその時に生徒が私に教えてくれました、「日本の若い数学者が████予想の証明を宣言した」と。

インタビュアー: 2013年の4月のことですね。その後、論文誌に日奉氏の証明が掲載されましたが、それをご覧になって、何か特別に思うことはありましたか。

ウィズダム氏: もちろん。あともう一歩早ければ……とは思いましたね。頭の中に出来上がっていた証明には自信がありましたし。それに……[沈黙]

インタビュアー: 教授?

ウィズダム氏: [少し間が空く]あの……これもまた、嘘のような話なのですが。その……実は……頭の中を盗み見られたんじゃないかと疑うほどに……彼の解と私のそれとがそっくりだったんです。類数公式の考案、他理論の応用、それぞれの展開の仕方、隅から隅まで全部です。馬鹿げた話に聞こえるでしょうが、本当のことなんです。当時は私もにわかには信じられなかった。

インタビュアー: そのことを公表しようとは思いませんでしたか。

ウィズダム氏: いいえ。そんなことをしても、証拠がないんじゃ戯言と受け取られるのは目に見えていましたからね。私以外の人たちは、私が████予想に挑戦していることすら知り得ませんでしたし。試しに知人に話したことがありますが、案の定の結果に終わりましたよ。

インタビュアー: なるほど。……以上ですが、何か他に話したいことがあれば。

ウィズダム氏: [少し間が空く]嘘のような話を重ねるようですみません。……たまにある夢を見るんです。日奉氏ではなく、私が████予想を証明し、数学連合から賞を受け取っているシーンです。それも、普通の夢ではなく、現実と区別がつかないほどにリアリティのある夢です。そんな現実、あるはずがないのに。……もう仕方のないことと、諦めていたつもりだったんですが。……私は自分が思ってるよりも未練がましい人間だったようです。

インタビュアー: そうですか。……あの、これは私の自発的な質問なんですが。

ウィズダム氏: なんでしょう。

インタビュアー: 日奉氏を、彼を恨んでいますか?

ウィズダム氏: まさか。私は彼を恨んではいません。むしろ傑出した数学者として尊敬してます。私が恨みを抱いているのは、自分の人生に対してですね。全てを████予想に捧げ、それでも後追いの天才に追い越される、惨めな、私の人生にです。彼の死も本当に残念に思っています。天才はなぜ皆若くしてこの世を去ってしまうのでしょうね。彼が世界に与えた深い影響力は、これからの多くの世代にも受け継がれることだろうと思います。

インタビュアー: そうですね……今日はどうもありがとうございました。これでインタビューを終了します。

ウィズダム氏: こちらこそ、話を聞いて下さって感謝しています。

《記録終了》

745-JP/インタビューログい-1 — 日付2013/██/██
SCP-745-JPはインタビューに対する報酬として携帯ゲーム機とそれに対応するゲームソフトを要求。審議の結果、要求に適切に応じ、インタビューを試みました。

日付: 2013/██/██
対象: SCP-745-JP
インタビュアー: 碓氷博士


《記録開始》

インタビュアー: おはようございます。SCP-745-JP。

SCP-745-JP: おはようございます。博士。

インタビュアー: 前日お伝えした通り、これからインタビューを始めます。まず、あなたが自身の特異性を自覚し始めたのはいつですか?

SCP-745-JP: 特異性っていうのは皆様が仰るところの過去改変能力のことですかね。それなら、大学3年の時です。その時期の私は日々に忙殺されていまして、講義のレポートの提出が間に合わないといった事態に遭遇した際に、友人のレポートを写させてもらって、一時凌ぎのつもりでそれをそのまま提出したんです。そしたらですね。友人のレポートが消えていて、私のだけが提出されていたんですよ。後で友人にそのことについて尋ねてみると「レポートはそもそも書いていないし、お前に写させた覚えもない」と答えられて。

インタビュアー: それが自身の過去改変能力を自覚するきっかけだったのですね。

SCP-745-JP: はい。確信を持ったのは内容を盗用した卒業論文を提出した時ですがね。

インタビュアー: それについては、また詳しく訊きます。あなたは大学卒業後、大学院にて████関数、████████の定理の研究などに単独で取り組んだようですね。

SCP-745-JP: 過去の取材ではそう答えましたね。まあ皆さんなら既にお見通しでしょうけど、僕はそんな研究には一回も手をつけたことはないですよ。あ、でも、取材なんかでへまを出さないように最低限の知識は持つようにはしてました。

インタビュアー: なるほど。あなたがこれまでに剽窃したものは、いずれも本来は過去4年内で生み出されたものであると、こちらは確認しています。これについては。

SCP-745-JP: というと?

インタビュアー: 例えば、あなたは数学者ですが、ベートヴェンの交響曲の楽譜ですとか、ドストエフスキーの小説の原稿ですとか、これらを剽窃すれば、歴史的な音楽家、小説家にもなれたとは考えませんでしたか。

SCP-745-JP: [笑い]そんな大昔に生まれたものを「今までなかった」ことにしたら、世界中の文化が書き換えられて大変なことになっちゃいますよ。そんなハイリスクなこと誰がやるもんですか。僕は、自分の能力がどれほど危険なものかはちゃんと理解しているつもりです。

インタビュアー: そうですか。それは本当によかった。剽窃したものが数学関連のものだけなのはなぜですか。

SCP-745-JP: 僕が元より数学者だからです。多才的な振る舞いで目立ちすぎても不審に思われるだけだと考えました。皆さんのような人たちがいて、軟禁される羽目になるとは思いませんでしたけどね。

インタビュアー: [少し間が空く]あなたは今のこの収容されている状況に対して嫌悪感を抱いていますか?

SCP-745-JP: べつに。むしろ、皆さんに見つけられてラッキーだった。ここにいれば、ダラダラと生きていく分には困らないんでしょう?少し退屈ですけど。それと、僕は表では死んだことになっているんですよね?それも僕にとっては渡りに船というものです。もういつボロが出るかとヒヤヒヤする必要はなくなりましたからね。社会から隔離されて、逆にすっきりしてますよ。

インタビュアー: では、実験に対して非協力的なのはなぜですか?

SCP-745-JP: だって、得にならないことをやっても意味ないじゃないですか。人の力を借りるんだったら、何か報酬を用意しないとダメですよ。

インタビュアー: あなたは実験に対する報酬として、インターネットの利用を要求していますね。これはなぜですか?

SCP-745-JP: いや、大した用事じゃないです。ただ、僕の死に対して世界がどう反応したのかが見たくて。

インタビュアー: あなたの能力の特性と脅威を考慮すると、インターネットの利用は許可できません。あなたの公的な死への反応でしたら、我々が収集して口頭でお伝えしましょうか。

SCP-745-JP: いいえ、いいです。私は皆さんを信用できるほど、皆さんのことを知らないので。

インタビュアー: 分かりました。その要求に対しては別の形で応じることにしましょう。質問は以上です。ありがとうございました。

SCP-745-JP: はい。お疲れさまでした。

《記録終了》

報告: SCP-745-JPの過去改変能力の細かな性質については、実験データが不十分であるため未だ不明瞭ですが、本インタビューで見せたSCP-745-JPの反応からして、歴史的著作物の剽窃も可能なのだと思われます。過去の事例からはオリジナルを飛躍的に発展させるのは不可能であることや、対象の内容を理解する必要はないことなどが見て取れます。幸いと言うべきか、SCP-745-JP自身がその能力の危険性に自覚があったために、大規模な文化改変シナリオには至らなかったようです。ですが、彼の能力が本人の自覚なしに発動するものであることを我々は留意すべきです。彼の能力は彼の意思に関わらず、他者に利用されることもあり得るということなのですから。-碓氷博士

付録:覚書

診察の結果、SCP-745-JPは演技性人格障害であると断定できます。この人格障害の罹患者は注目されることが何よりの快感であり、それを得るためならば手段を選ばずに嘘を重ね続けるといった行動傾向をとります。SCP-745-JPの場合、今はもうその偽りの人格になりきってしまい、嘘をついている自覚すらもなくなっていると思われます。SCP-745-JPは「若き天才と謳われた自分の死に、世界各国から惜しむ声がある」という今の状況に満足しているのかもしれません。おそらく、彼を希少な過去改変能力者として我々が注目していることも、彼にとっては快感なのでしょう。

過去改変能力を自覚する前のSCP-745-JPは、いたって真面目で優秀な大学生であり、友人も多かったと聞きます。もし過去改変能力を行使しているうちに強い自己顕示欲が表面化し、その人格が歪んだものへと変化してしまったのならば、SCP-745-JP自身も、SCP-745-JPが保有する特異性の被害者の1人であると言えます。

-賀茂川カウンセラー

ページリビジョン: 8, 最終更新日時: 13 Jul 2016 16:08
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