nn5n Foundation
Branch of SCP Foundation
nn5n: scp-2736 ニクソン時代
EuclidSCP-2736 ニクソン時代Rate: 85
SCP-2736
twonixons8.jpg

左: 財団に収容中のSCP-2736-1、1973年。

右: 大統領任期中のSCP-2736-2、1973年。

アイテム番号: SCP-2736

オブジェクトクラス: Euclid (SCP-2736-1)、Keter (SCP-2736-2) Neutralized

特別収容プロトコル: 身の安全のため、SCP-2736-1は武装サイト-291の標準的ヒト型生物収容室に封じ込めされます。対象にはテレビの視聴と、自身で選んだ新聞の購読が許可されています。また、要求に応じて他の読書媒体やメディアを入手できるように、毎月20 30 50 75 100 125米ドル(インフレ率を考慮して定期的に増額)の手当が支給されます。毎週1回、警備員1名の監視の下、対象は11号ビルの中心にある小さな中庭で1時間過ごすことが許可されます。年に1回、対象にはパトリシア・ニクソン、トリシア・ニクソン・コックス、ジュリー・ニクソン・アイゼンハワーの新しい写真がそれぞれ1枚ずつ与えられます。全ての特権は模範的行動によって左右されるものであり、プロジェクトリーダー/2736の判断でいつでも剥奪が可能です。対象には静脈炎の病歴があるため、健康状態を注意深く監視する必要があります。

SCP-2736-2は現在、未収容です。長期的な監視が維持されるべきであり、側近者としての潜入にはクラスIVの優先度が付与されています。

更新: SCP-2736の特別収容プロトコルは1994/04/23を以て廃止されました。

説明: SCP-2736は2名の生物学的に同一な成人男性、SCP-2736-1とSCP-2736-2で構成されています。確認できる限りにおいて、両者は元アメリカ合衆国大統領だったリチャード・M・ニクソンです。彼らは“事案ヤヌス-2736”と指定される理解の余り及んでいない出来事の結果、不明かつ異常な手段によって、それ以前は異常性の無かったリチャード・M・ニクソンが2体の異なる個体へと“分裂”して誕生した存在です。SCP-2736-1とSCP-2736-2は、事案ヤヌス-2736までのリチャード・M・ニクソンの記憶全てを共有しており、事案発生以降にそれぞれ独立した意識を発展させているように思われます。しかしながら、SCP-2736-2を研究のために入手することができないことから、これは決定的な確認が不可能です。

SCP-2736-1は事案ヤヌス-2736以来、財団の保護下に置かれており、その存在は一般社会から隠蔽されたままです。SCP-2736-1は異常な手段によって誕生したにも拘らず、SCP-2736-2とのレベルII因果関係共有(肉体的・精神的 ― 補遺3および5を参照)を除いては異常特性を示しません。事案ヤヌス-2736の間に負傷した結果、対象の胸部には重大な瘢痕が残っています。

SCP-2736-2は、1969年から1974年まで第37代アメリカ合衆国大統領を務めたリチャード・M・ニクソンとして世界的に認知されている人物です。SCP-2736-2が高い社会的地位を有する目立つ存在であることに加え、GoI-113による保護と財団側の回収試行への継続的干渉によって、SCP-2736-2は現在も収容できない状態が続いています2

回収: 1951/06/21、潜入機動部隊シータ-3-3(“連邦準備”)は、カリフォルニア州モンテリオの私営キャンプ場“ボヘミアン・グローヴ”3における秘密裏の監視任務を実施しました。キャンプ場の治安部隊として潜入していたシータ-3-3のエージェントたちは、最終的に事案ヤヌス-2736へと繋がったGoI-113構成員による夏至祭りを観察していました。

フィルムログ転写2736-01 – 監視任務 [113]-V-779

日付: 1951/06/21

時刻: 22:48 PST – 23:27 PST

場所: ボヘミアン・グローヴ (LoI-729)

機動部隊: シータ-3-3 (秘匿任務中)

注: オリジナル版のフィルムログは、2台の隠し手持ちカメラでシータ-3-3のエージェントが秘密裏に撮影した映像を編纂したものである。カメラ-1は群衆の後ろにあり、全体をはっきりと映していた。カメラ-2は群衆の前方近くにあり、比較的近くで祭典の進行を映すことができた。映像は白黒である。


[記録開始]

<00:01> カメラ-1は大きなアメリカスギに囲まれた大きな空き地を映している。時間帯は夜間。空き地の中心部に、牡羊の頭部を象った高さ10mの壊れかけの石像が立っている。像の足元には巨大な焚火が燃えており、出席者が持っている幾つかの木製松明を除いてはこれが唯一の光源である。焚火から数m離れた場所では、深い長方形の穴が地面に掘られ、掻き出された土が横に積み上げられている。カメラは群衆を映すように移動し、約500名の出席者がいるのが見てとれる。全員、黒いローブを着用し、フードを被っている。

<07:28> (カメラ-1) 群衆が道を開ける ― 14名の男性から成る一団が空き地に到着し、焚火へと進む。14名は全員ローブを着用している。

<07:40> (カメラ-2) 一団がカメラの前を通り過ぎる。素顔を露わにしている1名を除き、全員が仮面を付けている。 [静止映像の検査で、素顔の男性はリチャード・M・ニクソンであることが判明している。以降“R.N.”と表記。緊張し、恐れている様子である。]

<07:52> (カメラ-2) R.N.は群衆の前へと誘導され、石像の足元で立ち止まる。高い背もたれの付いた木製の椅子(外見上、玉座に似ている)が彼の背後へと持ち込まれる。R.N.を取り巻く数名の男性が彼のローブを脱がせ、全裸にする。

<08:30> (カメラ-2) R.N.は木製の椅子に着席させられ、手首・足首を縛り上げられる。絞首縄が首に掛けられ、雑な造りの王冠が頭に被せられる。[絞首縄は支えの梁に繋がっておらず、何かの象徴的な役割を果たしていると思われる。王冠は骨片から形作られているように見える。]

<11:13> (カメラ-2) 仮面を付けた男のうち12人がR.N.を取り囲み、各々ローブからナイフを取り出す。13人目の男、以下“話者”が群衆に向き直る。

話者: 今夜は新時代の夜明けを象徴します。

(群衆の拍手と喝采。)

話者: 今夜、私たちは第一なる者の生誕を目の当たりにするのです。

(更なる喝采。)

<12:05> (カメラ-2) 仮面の男のうち1人、以下“仮面男-1”がR.N.に歩み寄る。

(群衆が沈黙する。)

<12:52> (カメラ-2) 仮面男-1がR.N.の顔に向けてナイフをかざす。

(苦痛を示すR.N.の絶叫。)

<13:20> (カメラ-2) 仮面男-1は群衆に顔を向け、片腕を頭よりも高い位置に上げる。彼は手に小さな物体を持っており、そこから血が滴っているように見える。

話者: 私たちは彼の左目を火へと捧げます、王が常に見ることが出来るようにと。

<13:33> (カメラ-2) 仮面男-1が、持っていた小さな物体を焚火に投げ入れる。

<13:49> (カメラ-2) もう一人の仮面の男、以下“仮面男-2”がR.N.に歩み寄る。仮面男-2はナイフをかざしつつ、空いている方の手でR.N.の顎を掴む。

(苦痛を示すR.N.の絶叫 ― 数秒後、ゴボゴボという音が聞こえる。)

話者: 私たちは彼の舌を炎へと投げ入れます、王が決して彼自身を欺くこと無きようにと。

<14:42> (カメラ-2) 仮面男-2が、持っていた小さな物体を焚火に投げ入れる。

<15:10> (カメラ-2) 残る仮面の男たち、以下“仮面男-3~-12”がR.N.の横に並び、代わる代わる彼の手をナイフで切り付ける。

(苦痛を示すR.N.の絶え間ない絶叫。)

話者: 私たちは彼の指を炉へと投じます、王の把握が決して緩むこと無きようにと。

<16:31> (カメラ-2) 仮面男-3~-12が各々、持っていた小さな物体を焚火に投げ入れる。

<17:19> (カメラ-2) R.N.は今や、顔と手に負った傷から大量に出血している。数名の仮面男が彼を椅子から降ろし、近くの穴へと運んで降ろす。

<18:44> (カメラ-2) 数名の仮面男がシャベルを手に取り、R.N.を生き埋めにし始める。

話者: 私たちは彼の身体を穴へと与えます、悠久の深淵がそれを磨り潰して塵へと帰せしめ、小麦から籾殻を除いてくださるようにと。

<21:25> (カメラ-2) 仮面男たちがR.N.の生き埋めを完了する。

(群衆の拍手と喝采。)

<21:42> (カメラ-1) 2つの同一の麦藁人形 ― それぞれ高さ約3m ― が空き地の端から像の足元へと持ち込まれ、焚火の上へと支え付きで立てられる。

<22:14> (カメラ-2) 人形が燃え始める。

(群衆は沈黙する。)

bohemian.jpg

カメラ-1からの静止映像、<25:16>。

<24:38> (カメラ-1) 人形は燃え続けながら、火花・閃光・小規模な花火のような爆発を発生させ始める。[爆薬が初めから人形に仕込まれていたのか、この現象に異常な要因があるのかは分かっていない。]

<29:01> (カメラ-2) 燃え尽きた人形が崩れる。[この時、シータ-3-3のエージェントたちは焚火の炎が濃い赤色に変わり、より暗く見えると報告した。しかし、この事象は白黒のフィルムでは正確に映っていない。]

(石と石を擦り合わせるような低音が聞こえ始める。起源不明のこの音は数分間にわたって空き地に響き渡り、着実に音量を増大させた。)

<35:05> (カメラ-2) 2体の人形は完全に灰と化している。[この時、シータ-3-3のエージェントたちは焚火の炎が通常の色および明るさを取り戻したと報告した。]

(研磨音が徐々に薄れてゆく。群衆は沈黙している。)

話者: 第一なる者は生まれ変わるでしょう。

<37:49> (カメラ-2) R.N.が埋められ、充填された穴の映像。穴の上に被せられている土が、何かが表面下で動いているかのように崩れ始める。

<38:01> (カメラ-2) 地中から2本の手が飛び出し、全裸の男が穴から身体を引き出した後、疲労によって地面に倒れ込む。 [静止映像の検査は、この男性がリチャード・M・ニクソンであることを示すが、仮面男たちによって負わされた傷はいずれも身体に残っていない。この個体を以降“SCP-2736-2”とする。]

<38:09> (カメラ-2) 話者がSCP-2736-2に歩み寄り、立ち上がるのを手助けする。

<38:15> (カメラ-2) 2人目の全裸の男が穴から身体を引き出す。[静止映像の検査は、この男性もリチャード・M・ニクソンであることを示すが、仮面男たちによって負わされた傷はいずれも身体に残っていない。この個体を以降“SCP-2736-1”とする。]

<38:43> (カメラ-2) 話者は、SCP-2736-2に何事か話す様子を見せた後、ナイフを手渡す。

<38:51> (カメラ-2) SCP-2736-2はナイフを受け取り、SCP-2736-1に向き直る。SCP-2736-1は立ち上がろうとするが、SCP-2736-2はその上から飛び掛かり、ナイフで突き刺そうとする。2体は格闘し、SCP-2736-1は胸部に幾つもの深い裂傷を負う。

<39:30> (カメラ-2) SCP-2736-1は横にあった地面の岩を掴み、SCP-2736-2の側頭部に叩き付ける。SCP-2736-2は気を失って倒れる。SCP-2736-1は、負傷から出血しつつも、立ち上がって群衆から逃げる。

<39:41> (カメラ-1) 森に向かって走るSCP-2736-1の映像。数名の仮面男と、群衆のうち何人かが、後を追って走り始める。

[記録終了]


この時点で、大々的な混乱を利用し、シータ-3-3司令官ウィリアム・ミークスはエージェントらに対し、SCP-2736-1を回収してボヘミアン・グローヴから脱出させるように指示した。これはGoI-113から受けた扱いに鑑みて、SCP-2736-1が財団に対し従順であるかもしれないという予測、またGoI-113とLoI-729に関する有益な情報を提供するかもしれないという考えに基づく判断である。回収作戦は成功したものの、その後のボヘミアン・グローヴ保安部隊との銃撃戦でシータ-3-3のエージェント3名が射殺された。

ボヘミアン・グローヴからの回収に続き、SCP-2736-1はサイト-109へと移され、傷の手当てを受けました。

インタビューログ2736-001

日付: 1951/06/22

場所: サイト-109、診療室C

質問者: ウィリアム・ミークス司令官 (MTF シータ-3-3、以下“W.M.”)

回答者: SCP-2736-1


[記録開始]

W.M.: もし良ければ、貴方に幾つか質問をさせていただきたい。

SCP-2736-1: いいだろう。君たちには大きな借りが出来てしまったようだ。

W.M.: ありがとうございます。記録のために、貴方の名前・年齢・職業を述べてください。

SCP-2736-1: リチャード・ニクソン、38歳。職業は合衆国上院議員だ。

W.M.: 貴方はどういった経緯でボヘミアン・グローヴに関わり始めたのですか?

SCP-2736-1: あれはそう、1年ほど前、私はある人々から夕食会に招かれた。本格的な大物たちからだ。そこで話をして、週末にグローヴへ来るべきだと彼らは言った。

W.M.: そして、貴方は向かったのですね。

SCP-2736-1: あの手の招待を受けるためなら殺人さえしかねない奴らだっているさ。

W.M.: 貴方がそこを訪れた時、何が起こったのですか?

SCP-2736-1: 大したことは無かった、最初のうちは。彼らは専ら私に周りの風景を見せて回った。美しい場所だよ、森の全て、あの杉林… 古く、実に古くからの場所だ。私たちは殆どの時間、ロッジの一つで酒を飲み、煙草を吸って過ごした。そして話をした。

W.M.: 何の話をですか?

SCP-2736-1: ああ、その… 実を言うと、私のことなのだ。彼らは私に大いに興味を持っている様子で、私が人生において求めている物や、将来的なプランについて尋ね続けた。ある時点で、私は、自分のキャリアはかつて思い描いていたほど壮大なものにはなりそうも無いと口にした。彼らは、手助けが出来るかもしれないと言った。

W.M.: 手助け ― どういう形でですか?

SCP-2736-1: 彼らはその時は具体的な事を言わず、グローヴを定期的に訪れてもっと多くの人々に会うべきだとだけ伝えてきた。私が一月に最低でも週末1回、時にはもっとあそこで過ごすようになるまではそう長くなかった。あそこに集う人々ときたら… まるで重要人物は皆メンバーであるかのようだったよ。下院議員、知事、その他大勢だ。正真正銘の権力を持つ者たちもいた、銀行家に軍需産業社長に石油王。そして私が名前さえ聞いたことの無い者たち ― だが、百万長者や億万長者たちが彼らを見る目付きだけでも、どれほどの重要な存在なのかは分かる。彼らはまるで怖れているかのような目をしていた。ほんの数ヶ月後には、私はそれまでのキャリア全てより多くの政治的な付き合いを重ねていた。突然、私の前には見通しが開けていたんだ。

W.M.: では、どういう成り行きでこうなったのですか?

SCP-2736-1: (溜息) ある晩、私は式典に招待された。クラブの伝統だと言うので、衣装としてローブを渡された時も疑問には思わなかった。私たちは森の中にある、例の“牡羊ヶ廟”まで歩かねばならなかった。数百人、その全員が暗闇の中を松明を持って歩いたわけだ。一時間近くかかった。やがて、私たちは羊の頭の形をした像が置いてある空き地に辿り着き、式典が始まった。実に気味の悪い流れだったよ。最初、私はこれを真剣に受け入れるべきかどうか分からなかったんだが、その時、私は… あれを… 見たんだ。ようやく私は、自分が何と取引したのか、この人々に何が出来るかということに気が付いた。あの晩、ロッジに戻った後で、彼らは私をメンバーに加えた。それからそう長くないうちに、彼らは私を“王”にしたいと申し出てきた。

W.M.: 貴方を王に

SCP-2736-1: 彼らは、人類は新たな時代に入りつつあるが、その前に4人の偉大な王が立ち上がり、道を準備しなければならないのだと言った。長らく私のような、第一の王となるべき者を探し続けてきたと。この世界は全て私のものになる、ただイエスと言えばいいのだと彼らは語った。

W.M.: 受け入れたのですね。

SCP-2736-1: (沈黙) そうだ。そして昨晩、彼らは私を牡羊ヶ廟に連れ戻すと… うん、君たちもそこに居て、見た通りだ。快い手順にはならないだろうと警告されてはいたが、ただ… あそこまで酷いとは思わなかった。だが彼らは、私に対してする事にはすべて理由があるのだと言った。“第一の者”となる前に、私は生まれ変わる必要があった。

W.M.: 彼らが貴方を地中に埋めた時、貴方はその後15分以上もそのままでした。その間に何が起こっていたかを思い出せますか?

SCP-2736-1: あまり覚えていない。失血でショック状態だったはずだし、彼らがシャベルで土を被せ始めた時はもうこれで終わりだと考えた。息が詰まり、何もかも黒に包まれたが、私はまだ死んでいなかった。私は… 夢を見たと思う、どんな内容かは思い出せないがね。だが夢の中では、誰かが私と一緒にいた… 男だ。暗闇の中にいて、顔は見えなかった。彼は星がどうこうという話をして、私は… 泣いていたと思う。そして私は目を覚ました。まだ穴の中で、しかしもう傷付いてはいなかった。パニックを起こし、土を掻き分けて進み始めた。その時になって、私は何かが私に逆らって動いているのを感じたんだ。それがだった。私が穴から這い出した時、彼はもうそこに立っていた。仮面の男が彼にナイフを渡し、私の心臓を抉り取るようにと告げて、そして… 君たちも続きは分かっているだろう。彼をノックアウトできるほどの力が私に残っているとは思わなかったよ。海軍時代の訓練の賜物だな…

W.M.: 貴方が見たという夢の話ですが、貴方-

SCP-2736-1: いいかね、私は非常に疲れているんだ、それに妻に電話してどこにいるか伝えなければ。手配してもらえるかね?

W.M.: 申し訳ありませんが、そういうわけにはいきません。

[記録終了]

インタビューログ2736-002

日付: 1951/06/23

場所: サイト-109、診療室C

質問者: ウィリアム・ミークス司令官 (MTF シータ-3-3、以下“W.M.”)

回答者: SCP-2736-1


[記録開始]

SCP-2736-1: 言ったはずだぞ、妻と話ができない間は何も言う気は無いとな!

W.M.: 貴方をあそこから連れ出すにあたり、私は3人の部下を喪いました。言うまでも無く、何十年もかけて確立した全ての監視網もです。そろそろ我々に協力姿勢を見せるべきでしょう。

SCP-2736-1: 君のしてくれたことに私が感謝していないかのような口ぶりだがな、君たちは私をまるで忌々しい重犯罪者か何かのようにここに閉じ込めている! こんな扱いをされてたまるか、私は上院議員だぞ! すぐに君の監督者か、誰でもいいからここの責任者に連絡して伝えろ、私は家に帰るとな! 今日だ! パットと娘たちは酷く心配しているだろう、可哀想に。

W.M.: ええ、そのことなのですが…

SCP-2736-1: 何だ?

W.M.: それについて貴方と話そうと思ってここに来たのです。昨夜、我々が回収できなかったもう片方の“貴方”なのですが… 発見しました。

SCP-2736-1: そうか、それは良かった。奴は何処にいる?

W.M.: その… 貴方の家です。

SCP-2736-1: わた… (動揺を示す) 奴はあそこで何をしているんだ? 何を求めている? なぁ、パットと娘たちは大丈夫か、奴は… 奴は家族を傷付けたか?

W.M.: 貴方が考えているようなことは起こっていません、貴方の家族は安全です。

SCP-2736-1: た… 確かか?

W.M.: はい、むしろ事は… もっと複雑なのです。つまり、もう一人の“貴方”ですが、彼はただ貴方の家にいるだけではないのです。昨日から、彼はそこに住んでいる。貴方の妻子が把握している限りでは… 貴方は失踪したということにすらなっていません。

SCP-2736-1: (長い沈黙) あの… あれは… 今、家族と共に?

W.M.: はい。

SCP-2736-1: それで家族は… 奴を私だと思っているんだな?

W.M.: その通りです。申し訳ない。

SCP-2736-1: (動揺を示す) だが君たちは… 君たちはそこに行って、奴を家から連れ出したんじゃないのか、それなら…

W.M.: そうしたいのは山々ですが、グローヴにいる貴方の友人たちは、彼をあそこに留めておきたいようでしてね。彼らは信じられないほどの警備態勢を敷いています。彼には近づくことさえできない。

SCP-2736-1: しかし… そんな事があってたまるか、私の家にあんな… 詐欺師をのさばらせるだなんて! パットに警告してくれ、私に彼女と話をさせてくれ!

W.M.: 先ほども言ったように、彼女との会話を許可することは出来ません。議論以前の問題です ― 彼女に警告するのは、あまり意味がありません。例え我々が彼女と連絡を取ったとしても、彼女が我々の言う事を一言でも信じるかは怪しい所です。

SCP-2736-1: だが… そんな事が…

W.M.: 貴方の動揺は分かりますが、少なくとも当分の間、我々にできることはあまりありません。ですから、ボヘミアン・グローヴやそこでの交流、他の晩に貴方の身に起こったと考えている事柄に関するどのような情報でも、これを解決する糸口に成り得ます。

SCP-2736-1: (叫ぶ) それがお前たちの解決策か? 私が知らされるのは妻と同じベッドに化け物が眠っているという事だけで、その上まだ情報を搾り取る気か? 大層な神経の太さだな!

W.M.: いいですか、我々には彼女が貴方の妻であるか否かそれさえも定かでない、ですから幾つかの返答をある権利はあるはずです。

SCP-2736-1: 何の話をしている?

W.M.: 貴方は自分が“本物の”リチャード・ニクソンだと主張し続けていますね、まるでそれが我々にとって自明のことだとでも言うように。しかし私が見たもの、貴方が語ってくれたこと、その内のどれ一つとして貴方がもう片方の“貴方”よりも“本物”であるという事を意味しません。我々が知る限りでは、貴方の家にいる男こそが本物の貴方であり、貴方自身は偽物です。或いは、貴方たち二人はどちらもリチャード・ニクソンであり、両方とも本物です。

SCP-2736-1: あれは私じゃない、言っただろう! 私は… ここに来てから、あれの事を山ほど考えた。グローヴで起きた事を。今では、私も理解できたと思う。

W.M.: ほう?

SCP-2736-1: 奴らがしたことは、単に私を2人に分けただけじゃない… 奴らは2人の同一人物を作らなかった、それが目的じゃない。私は奴と同じじゃない、私はそれを知っている、感じる。クソが、私はもう数日前と同じ人間ですらない。奴らが私にしたことは、私を変化させたんだ。

W.M.: どういう形でですか?

SCP-2736-1: かつての私は実に忙しない男だった、とても大きな野心があった。私は… 栄達に、地位に… 権力に、飢えていた。

W.M.: しかし、もう違うと?

SCP-2736-1: 私の一部が消えてしまったような感覚だ。いや… 消えてはいない。あれが何処へ行ったか私には分かる。

W.M.: それはつまり…

SCP-2736-1: (溜息) 第一の者となることを彼らが申し出てきた夜については話したか? その直前に、彼らが私に何を尋ねてきたかを? 私が何を言い、その職務に相応しい人物だと彼らに判断されたか知っているか?

W.M.: 何ですか?

SCP-2736-1: 彼らは、権力のために私に何をする覚悟があるかと聞いた。私はこう言った、“何であろうとも”。今や狂ったように聞こえるが、私はそう答えたんだ。そしてそれは意味ある言葉だった、私は全身全霊からそう答えた。さっき言ったように、私は今やかつての私じゃない。だが奴はそうだ。そうさ、それが奴の全てだ。彼らが求めていたのはそれだった。奴らは自分たちのための王を得たのだ。そして君は、そのクズどもが奴を私の家族と共に住まわせていると言う。

[記録終了]

補遺2736-01

SCP-2736-2の政治的キャリアの要約版タイムライン

1951/06/21: ボヘミアン・グローヴで事案ヤヌス-2736が発生。

1952/11/04: ドワイト・D・アイゼンハワーがアメリカ合衆国大統領に就任し、SCP-2736-2が副大統領となる。

1956/11/06: ドワイト・D・アイゼンハワーがアメリカ合衆国大統領に再選し、SCP-2736-2が再び副大統領となる。

1968/11/05: SCP-2736-2がアメリカ合衆国大統領に就任。

1969/07/20: NASAのアポロ11号が、2人の人間を歴史上初めて月面に着陸させる。

1972/11/07: SCP-2736-2がアメリカ合衆国大統領に再選。

1974/08/09: ウォーターゲート事件を切欠に、SCP-2736-2がアメリカ合衆国大統領の職を辞任する。

1974/09/08: アメリカ合衆国大統領ジェラルド・フォードがSCP-2736-2に、任期中に犯したあらゆる罪への全面的恩赦を行う。

補遺2736-02

以下のSCP-2736-1へのインタビューは1974/09/15(初期収容から23年後)、SCP-2736-2が最近になって米国大統領の職を辞任したことについて話し合う目的で行われました。

インタビューログ2736-491

日付: 1974/09/15

場所: 武装サイト-29

質問者: サミュエル・ベネット博士 (プロジェクトリーダー/2736、以下“S.B.”)

回答者: SCP-2736-1


[記録開始]

S.B.: 例のニュースを見たそうですな。

SCP-2736-1: それは君、何だ、君だって自分の顔がテレビに映るのに慣れることは決してあるまい。

S.B.: (くすくす笑い) 想像がつきますよ。ですが、貴方はこれをどう見ていますか? これまでの展開を簡単に受け入れることは容易ではないと思うのですが。

SCP-2736-1: それはそうだ、奴が私の名前に、この国に… パットと娘たちにあんな真似をするのを見るのはな。奴の結婚生活が暗礁に乗り上げているとまで言われているじゃないか、聞いたかね? いや、文句を言っている訳じゃないんだ、ただパットがこれから切り抜けなければならない物事についてだけ考え続けている。だが、少なくとも奴は辞任した。これで終わりさ。

S.B.: ええ、彼の政治生命は確かに終わったようです… 実を言うと、貴方の考えを聞かせてもらいたかったのですよ。

SCP-2736-1: いいとも。

S.B.: ボヘミアン・グローヴでの儀式の前に、貴方の友人たちは、貴方が王になればこの世界は全て貴方の物になると言ったらしいですね。

SCP-2736-1: その通りだ。

S.B.: では、ここ数ヶ月間の出来事をどう説明しますか? SCP-2736-2は全国的なスキャンダルに巻き込まれ、政治的な資本の全てを失って、不名誉のうちに辞任を余儀なくされました。それにこれは最近になって始まった事でもないでしょう? 最初から、彼は一度として易々と道を進むことは無かった。最初に大統領選に出馬した1960年にはケネディに敗れている。ケネディは然程経たないうちに死んでしまい、その数年後にようやくSCP-2736-2は大統領に就任しました。しかしその後も… ベトナム戦争、カンボジア爆撃、全ては酷い不評に見舞われた挙句、最終的に失敗に終わっています。そして最後にウォーターゲート事件。貴方の友人たちがグローヴで約束したものとは程遠いと思いませんか?

SCP-2736-1: 確かにそうだな。

S.B.: 貴方が何故そう思っているのかを知りたい。約束が全て嘘だったという事は有り得るのでしょうか?

SCP-2736-1: それは大いに疑わしい。つまりだ、連中の一番の関心事は私を権力の座に置き… あー、そこに留めておくことに有ったのだからね。

S.B.: それでは、彼らは単に約束を果たすことができなかったと考えているのですか? 貴方が信じ込まされたほどに強力な訳では無かったと?

SCP-2736-1: いや、そんなことは有り得ない。私は、奴らが私に約束した事柄の全てが可能だという事を事実として知っている。恐らく、もっと多くの事を。

S.B.: なら… 何故です? 全ての挫折と、最近の失脚をどう説明するのですか?

SCP-2736-1: なぁ、グローヴの…君の言葉を借りるなら“友人たち”だが、ここ何年もの間のんびりと過ごしてきた訳じゃないんだろう?

S.B.: どういう意味ですか?

SCP-2736-1: つまり、あのグローヴでの夜以来、奴らは私をずっと探していたんじゃないかという事だ。その通りなんじゃないのか?

S.B.: それは… 私は、この件について貴方と話し合うことは出来ません。

SCP-2736-1: 理解できるとも。だが私だって馬鹿じゃない、この施設に移送されたのがまさにその理由だと分かっている4。そうでもなければ、私がこんな保安体制を必要とする訳がない。私は危険でないのだから、私に対処するためのものではないのだ。私は“友人たち”が当時私を探していたと考えているし、今でもそうだろう。彼らが手を緩めることは決して無いだろうと思う。

S.B.: ええ、まぁ… 今はそれが真実という事にしておきましょうか。貴方はどうしてそうなったと思うのです? 何故彼らは貴方を発見するために時間と労力を費やし続けていたのですか?

SCP-2736-1: 儀式が完結しなかったからさ。君たちの部隊が私をグローヴから救出した時、君たちは奴らの計画に大きな穴を空けてしまったわけだ。気付かなかったのだろうが、それでも君たちは成し遂げた。だから奴らにとって、そしてあいつにとっても、全ては地獄行きだ。私はあの晩、死なねばならなかったのだよ。

[記録終了]

補遺2736-03

1974/10/12、SCP-2736-1は静脈炎を起こし、財団所属の静脈学者による手術が行われました。同日、SCP-2736-2はカリフォルニア州ロングビーチにて静脈炎で入院し、手術と治療を受けました。

補遺2736-04

1993/06/23(初期収容から42年後)、パトリシア・ニクソン5がニュージャージー州パークリッジの自宅で肺癌により死去しました。彼女の死に大きな衝撃を受けたSCP-2736-1は続く数ヶ月間に内向的性格を強め、プロジェクトリーダー/2736とのインタビューに応じることを拒絶しました。また、対象は頻繁に睡眠不足を訴えるようになりました。

補遺2736-05

1994/04/18(初期収容から43年後)、東部標準時17:45頃、SCP-2736-1は深刻な脳血管発作(脳卒中)を起こし、武装サイト-29の黄号診療所へ移送されました。後に、SCP-2736-2もニュージャージー州パークリッジの自宅で同時刻に脳卒中を起こし、ニューヨーク州ニューヨーク・シティのニューヨーク・プリスバイテリアン病院に搬送されていたことが判明しています。両者ともに部分的麻痺が残って会話不可能となり、数日かけて脳浮腫を発展させました。

その容態にも拘らず、1994/04/21の夕方になって、SCP-2736-1は不可解にも ― 興奮した譫妄状態ではあったものの ― 発話を開始しました。診療所スタッフはプロジェクトリーダー/2736へ通知し、約20分間の音声が記録に残されました。

オーディオログ2736-01

日付: 1994/04/21

時刻: アメリカ東部標準時 19:07 – 19:25

場所: 武装サイト-29、黄号診療所

対象: SCP-2736-1


[記録開始]

<00:46> 大地は7日間にわたって赤き油を流し、私たちはそこに埋葬された死体へ思いを馳せる。数十億。魂は常に最初の犠牲者だ。何も変化しないが、変化は訪れつつある。

<03:03> 月は最初の小さな一歩に過ぎない。

<07:55> (不明瞭)

<10:55> 祈りは美しい物だが、君たちは逃れられない。空は裂けるだろう。

<12:11> 第一なる者は彼の剣へと身を投げるが、彼の血潮は次の千年のための種を播く。第二なる者は全ての罪業を拭い去り、誰も城郭の下に眠る齧られた骨を見つけ出すことは無い。第三なる者は二重の歯を見せて世界へと微笑み、彼の笑い声は水門を開く。第四なる者は主へと刃向かい、永久にその対価を払い続ける。

<13:45> 山脈よりも高き煙突。雲を覆い隠す煙。私たちは一つの旗の下へと団結するのだ。大規模な新体制。終わり無き世界。瞼無き世界。

<14:30> (笑い声が続く)

<16:14> まず初めにアメリカが墜ちた。それは再び墜ちるだろう、井戸の奥深く、君たちが見逃すことの無い何処か他の場所へと。警告はさせてもらったぞ。

<17:03> (啜り泣き)

<18:18> (恐怖に震える声) 彼が… 私を、見ている。

[記録終了]

この直後にSCP-2736-1は深い昏睡状態に入りました ― 後ほど、SCP-2736-2も同時に昏睡状態に陥ったと報告されています。翌1994/04/22、東部標準時21:08、SCP-2736-1とSCP-2736-2は同時に死去しました。

1994/04/23を以て、SCP-2736は“Neutralized”へと再分類されました。

補遺2736-06

fourkingsflipped.png

左から右に: SCP-2736-2、第39代合衆国大統領ジミー・カーター(PoI-62679)、第38代合衆国大統領ジェラルド・フォード(PoI-56121)、第40代合衆国大統領ロナルド・レーガン(PoI-86761)、1981/10/12撮影。

ページリビジョン: 6, 最終更新日時: 28 Jan 2017 11:06
Unless otherwise stated, the content of this page is licensed under Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License

Privacy Policy of website