nn5n Foundation
Branch of SCP Foundation
nn5n: scp-5002 収容室に死す
EuclidSCP-5002 収容室に死すRate: 297
SCP-5002

アイテム番号: SCP-5002

オブジェクトクラス: Neutralized

特別収容プロトコル: SCP-5002の死体はサイト-06霊安室の遺体トレーに保管されます。追加の検死が分析部門の権限の下に要求される場合が有ります。

SCP-5002に関わる全ての資料は、廃棄が許可されるまで厳重保管庫に置かれます。

説明: SCP-5002の死についての調査が進行中です。SCP-5002の更なる情報は、今日までの調査記録も含め、適切なクリアランスの職員にのみ利用可能です。

SCP-5002は、エマ・ヘイスティングスとして知られる"タイプグリーン"現実改変ヒューマノイドでした。連合王国政府の記録によれば、SCP-5002は1978年に誕生し、イングランド・テュークスベリーで育ちました。SCP-5002は自営業者であり、探偵小説の著者としてジョフェ・ブックスから小説を10冊出版していました。

SCP-5002が自身の作品の出版物を読み返したとき、その文章に描写された事象が現実に発生します。実際のそれぞれの出来事は物語の進行と並行に発生し、細部は幾らか変化しつつも(例えば、名称・日時・場所など)その全体的な順序は類似したものとなります。SCP-5002は、財団による収容・実験が開始するまでは自身の異常性に気付いていなかったと主張しています。

2017年1月、財団スペシャリスト達は連合王国警察の報告書とSCP-5002の作品が対応している事を、大衆に察知される前に発見しました。2017年2月、SCP-5002は財団に拘束され、サイト-06ウィングGの標準ヒューマノイド収容セルに収容されました。

2019年12月14日、午前7時前後、ベッド上で死んでいるSCP-5002が発見されました。収容セルはロックされており、不法侵入の痕跡は発見されませんでした。ウィングG警備室の電子記録から、過去12時間に遡ってドアが常にロックされていたのが確認され、セルの監視カメラには、その期間中SCP-5002のみが記録されていました。サイト全体の警備記録からは、その期間中ウィングGに設置されているスクラントン現実錨が稼働していた事が分かっています。

分析部門エージェントのエレン・オコナーがSCP-5002に無力化の調査を指揮するように指示されました。


調査記録:

SCP-5002調査情報更新報告

日付: 2019年12月16日

場所: サイト-06ウィングG控室

参加者:

エージェント・エレン・オコナー ― 分析部門
ドクター・カレン・ヤウ ― サイト-06、主席研究員
マイケル・シンプソン ― サイト-06、次席研究員
兵士ジョセフ・ロウリー ― ウィングG、警備兵
ドクター・ナディン・グロッセンバッカー ― サイト-06、主席医務官並びに病理医
管理官イヴリン・メイ ― サイト-06、サイト管理官
D-4986 ― ウィングG、Dクラス職員

<記録開始>

管理官メイ: 紳士方並びに淑女方、申し訳有りません。エージェント・オコナー、前へ。

エージェント・オコナー: ありがとうございます、サイト管理官、皆々様。本日は、忙しい中にも関わらず、ご協力して頂ける事に感謝致します。

D-4986: ふん。

兵士ロウリー: 黙れ、貴様!

次席研究員シンプソン: ああ、何故彼がここに? 昨日の情報更新には来ていなかったが。

ドクター・ヤウ: マイケル、エージェント・オコナーに話させてちょうだい。ごめんなさい。

エージェント・オコナー: 謝罪は不要です、ドクター・ヤウ。彼の心配は尤もです。実のところ、今回はもう一人ほど更に似つかわしくない人物も連れてきたかったのですが。

ドクター・ヤウ: まさか本気で――

エージェント・オコナー: 本気です、ドクター・ヤウ。昨日の情報更新は、エマ・ヘイスティングスの収容に関わっていたサイト-06職員の方々の為のものでした。ですが、本日は少々違います。今日は、一人を除き、この部屋にはミス・ヘイスティングスが殺害された夜にウィングGに居た方々全員が居ます。

次席研究員シンプソン: SCP-5002が無力化された夜の事ですね。

エージェント・オコナー: いいえ。彼女は異常な人間でしたが、それでも人間には変わりありませんでした。正義は彼女に報いなくてはなりません。だからこそ本日、私はこの中に彼女を殺した犯人が居る事を示してみせましょう!

管理官メイ: そんな事は有り得ません。私としては――

エージェント・オコナー: 管理官、宜しければ、始まりから振り返らせて頂けませんか。SCP-5002の収容を起こした事件から。



新聞紙: ロンドン・イヴニング・スタンダード

日付: 5 January 2017

LSEで殺人: 警察は"途方に暮れる"

ロンドン警視庁はケイト・ホロウェイ博士の殺人に関して何ら進展が無い事を認め、市民に調査への情報提供を呼び掛けた。先日月曜日、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスLondon School of Economicsの研究室にて、撲殺されたホロウェイ氏(23歳)が発見された。研究室は内側から鍵が掛けられており、凶器は未だ発見されていない。

警視総監ホーガン=ホウは、事件調査の為に市民に当事件に関する情報提供を求め、タレコミ用に専用の電話番号窓口を設けた。警視庁関係者に拠れば、この殺人事件は"途方に暮れる"ものであり、警官らは悪戦苦闘しているとの事である。ケンジントン・ダイヤモンド事件を解決した、あの私立探偵キャメロン・ブラックウェルも調査に協力しているようだ。

記者会見では、被害者の両親ピーター・ホロウェイ氏とイヴリン・ホロウェイ氏が、涙ながらに愛娘について語った……



日付: 2019年12月14日

担当者: エージェント・エレン・オコナー ― 分析部門

収容形式: サイト06、ウィングG、標準ヒューマノイド収容セルStandard Humanoid Containment Cell

一個のSHCC用ベッドフレーム並びにマットレス
一式のSHCC寝具 ― 全体に血痕付着
一個のSHCC用テーブル並びに椅子
一個の遠隔式埋め込みテレビ画面
一個のパナソニック電子タイプライター
一式の財団安全文房具 ― 全品存在
一冊の原稿 ― 432ページ
四連のタイプライター用紙 ― 白紙 ― 未開封
150枚の印刷用紙 ― 白紙 ― 鋏を用いて穴が空けられており、擬似的な格子模様が描かれている
一瓶のジャック・ダニエルのウィスキー ― 四分の三が空
一式の財団基本女性用衣服 ― サイズ8 ― 全品存在(死亡時の寝間着を除く)



インタビュー転写 ― SCP-5002無力化調査 ― 2019年12月14日

インタビュー対象: 兵士ジョセフ・ロウリー

エージェント・オコナー: ありがとうございます、ロウリーさん。

兵士ロウリー: できればジョーと呼んでください。

エージェント・オコナー: ロウリーさん、貴女はウィングGの常備深夜警備兵、それで間違いないですね?

兵士ロウリー: ジョーでお願いしますよ、本当に。貴女の助けになりたいのですよ。

エージェント・オコナー: 質問に答えて頂けますか、兵士?

兵士ロウリー: 良いですとも。ええ、自分が通常夜勤に当たります。職員番号の類も必要で?

エージェント・オコナー: いえ、構いません。そして、今日の朝SCP-5002の遺体を発見したんですね?

兵士ロウリー: ええ、その通りです。

エージェント・オコナー: 何が起きたか説明して頂けますか?

兵士ロウリー: ええ、ご婦人。自分は午前7時半でシフトを上がりますが、最後の仕事はD-4986をセルから連れ出して厨房で彼に朝食を食べさせる事です。午前7時、自分は警備室を出て収容セルを通り過ぎ、4986のセルに向かい、彼を厨房に連れて行きました。

エージェント・オコナー: D-4986はウィングG自体に寝泊まりしていますね。これは通常の事ですか?

兵士ロウリー: いいえ、違うでしょう。Dクラスの大半は中央宿舎で寝泊まりしますが、あいつはウィングGの実験に割り当てられていますから、余りの収容チャンバーに泊めているのです。

エージェント・オコナー: わかりました。これはドクター・ヤウの判断ですか?

兵士ロウリー: 実験に関してはそうですが、部屋の割り当てについては中央からです。

エージェント・オコナー: サイト管理官という事ですね?

兵士ロウリー: そうかと思います。4986は単に運良く低リスクなヒューマノイドに巡り合わせたわけです、自分らと同じく。自分はセルを再び通り過ぎ、その際にドアをがかたつかせて――

エージェント・オコナー: 申し訳有りません、兵士。"ドアをがたつかせて"とはどういう意味でしょう?

兵士ロウリー: ああ、そうですね。つまりはドアを素早く揺らしてしっかりロックされているか確かめるんです。ちょっとした習慣ですよ、通り過ぎる際の。単なる確認です。ともかく、SCP-5002のセルに入る事になり、そこで何かがおかしいと気付いたんです。

エージェント・オコナー: ドアはロックされていたのではないのですか?

兵士ロウリー: ええ、しっかりロックされていました。いや、奇妙な部分は何も聞こえない事だったんです。自分が通り過ぎる際には大抵、5002が下らん事を喚き散らしますからね。それが無かったので、奇妙に感じたんです。

エージェント・オコナー: 彼女が貴方に気付かなかったというのは?

兵士ロウリー: いえ。いつだってドアを激しく揺らしますからね、相当煩いから、あのアバ――彼女は気づいたはずですよ。

エージェント・オコナー: SCP-5002とは反りが合わなかったと受け取って宜しいですね?

兵士ロウリー: おお、何をしたがってるか分かりましたよ。ええ、あの女は気に食わなかったです。誰でもそうですよ。ミカエルや4986に聞いてみてください。SCP-5002は高慢ちきで……最悪の女でした。己がここで一番偉いと思い込んでましたよ。そんなに賢いなら、何でこんなとこに収容されているんだか?

エージェント・オコナー: そうですか。それで、通り過ぎる際にドアを揺すっても反応が無かったんですね?

兵士ロウリー: 二回とも。そこで、Dクラスを拘束してから、SCP-5002のセルの通し窓を開けたんです。彼女がベッドに横たわっているのが見えましたが、ブランケットは血まみれでした。いえ、あの時はまだ血とは分かっていませんでしたが、容態は悪そうでした。

エージェント・オコナー: その後何をしましたか?

兵士ロウリー: カレンの部屋――つまりドクター・ヤウです――に向かい、彼女にキーカードを求めました。そして、収容チャンバーに戻りました。

エージェント・オコナー: 何故ドクター・ヤウはキーカードを渡したんですか? それはセキュリティープロトコル違反では?

兵士ロウリー: 緊急事態じゃないならそうでしょうが、今回は正にそうだったんですよ。いずれにしろ、貴女の職場ではどうだか知りませんが、このウィングでは、我々は一丸となって、お互いを信頼合っています。ドクター・ヤウは自分を頼れる人物だと知っていますし、自分のすぐ後ろに居ましたからね、どちらにせよ。では、何を発見したか話しても良いですか、それとももっと余計な質問でもしますか?

エージェント・オコナー: 続けてくださって結構です。

兵士ロウリー: 収容セルに入ると、SCP-5002は身動きしていませんでした。聞かれる前に言っておきますが、これは収容プロトコル違反ではありませんよ。SCP-5002の異常性は何か書いているときにしか発現しませんし、明らかにそんな事はしていませんでしたから。それにセルには現実錨SRAが有ります。銃を構えてゆっくりベッドに近付きましたが、血だらけで彼女は息をしていませんでした。脈拍を確かめましたが、有りませんでした。彼女をひっくり返したところ、そこでカレンが来ました。SCP-5002の胸元を見て、彼女は悲鳴を上げました。

エージェント・オコナー: その悲鳴は本物に思えましたか?

兵士ロウリー: 勿論ですとも! こういう荒っぽい仕事柄、悲鳴は沢山聞いてきました。カレンは動揺していました。彼女は職業人ではありますが、それでも優しい質の人ですから。

エージェント・オコナー: その後はどうです?

兵士ロウリー: カレンをセルの外に連れ出し、彼女を落ち着かせました。そして、私は収容チャンバーに待機し、彼女は警備室に向かいサイト管理官と医務官を呼ぶ事になりました。

インタビュー転写 ― SCP-5002無力化調査 ― 2019年12月14日

インタビュー対象: 主席医務官ナディン・グロッセンバッカー

エージェント・オコナー: 貴女が到着した時の状況を説明してください。

ドクター・グロッセンバッカー: 7時45分くらいに着いたわ。ジョセフ・ロウリーは収容チャンバーのドアの前で待ってたわね。Dクラスは廊下に拘束されていたわ、何かしらの理由でね――あいつは不快な奴だったもの、前の女の子よりもよっぽどひどい。D-2825、可哀想な子。ロウリーは私に、ベッドに横たわるSCP-5002の死体を見せたわ。死体を調べている最中、彼はDクラスを連れて行く為にしばらく不在になってたわね。ブランケットには大量の乾いた血液が付着してたわ、特にSCP-5002の胴周りには。

エージェント・オコナー: 死因として有力なものは何ですか?

ドクター・グロッセンバッカー: 検死はまだ完了してないけど、今のところの考えでは、複数の刺突による心臓並びに肺への重度の外傷でしょう。少なくとも合計十回は胸やら首やら肩やらに刺されていると見ているわ。

エージェント・オコナー: 恐らくは右利きで彼女よりやや背高の人物に?

ドクター・グロッセンバッカー: 貴女、中々に鋭いわね。ええ、傷を基にした推理するとね。

エージェント・オコナー: 大して容疑者候補を狭めるわけではありませんが。有力な凶器の種類については教えて頂けますか?

ドクター・グロッセンバッカー: 勿論よ。被害者を刺したのは、鋭利で尖った刃物ね――あまり長くはない奴。

エージェント・オコナー: 貴女が使うメスのような?

ドクター・グロッセンバッカー: <笑う>ふふ、そうかもしれないわね、探偵さん。一般的な包丁の方がもっと有り得ると思うけれど。

エージェント・オコナー: 確かにそうですね。死体には何か奇妙な点は有りましたか?

ドクター・グロッセンバッカー: いいえ。明確な防御創は無かったわね。私の推理だと、犯人とは顔見知りだったのか、あるいは犯人が奇襲して取り押さえたのか。万が一の為に、性的暴行キットも使ったけど、決定的証拠は無し。ちょうどそれが終わった頃にドクター・ヤウが来たわ。

エージェント・オコナー: その時には彼女が貴女をウィングGに呼んでからしばらく経っていましたか?

ドクター・グロッセンバッカー: ええ、彼女はサイト管理官に報告をしていたの。あんまり良い気分ではないでしょうね、管理官のSCP-5002に対する態度を考えると。

エージェント・オコナー: どういう事ですか?

ドクター・グロッセンバッカー: ええ、これは単に――どう言うべきかしらねえ?――噂話なんだけれども。サイト管理官はSCP-5002に特別な関心を抱いていて、ドクター・ヤウは成果を出さなければいけない重圧に晒されていたのよね。

エージェント・オコナー: 私達誰しもが圧力に晒されていますよ、ドクター。それが稀な事だと本当にお思いですか?

ドクター・グロッセンバッカー: 何と言ったら良いのかしら? エージェントさん、私には漏らす事ができない秘密が有るの。けれども、貴女の仕事も重要だと分かっているわよ。私にできるのはせいぜい、サイト管理官と今回の件やそしてこのウィングとの関わりについて話し合った方が良い、って強調しておく事だけね。それにドクター・ヤウは明らかに度を越して動揺してるように見えたわ。

エージェント・オコナー: それは興味深いですね。最後に、ドクター、死亡推定時刻についてお願い致します。

ドクター・グロッセンバッカー: 繰り返すけど、検死が済んだ後なら、更に正確に分かるわ。まあ、今の目的の為に推定するなら、昨夜の午前1時から午前3時の間でしょうね。

エージェント・オコナー: では、その間はどこに居ましたか?

ドクター・グロッセンバッカー: <笑う>とても良いわね。寝てたわよ、探偵さん。医療ウィングの私室でね。それで、言葉通りに受け取られる気がするんだけど――この建物には監視カメラの死角になってる所も有るのよ、有り難い事に!

エージェント・オコナー: 隠し事でも、ドクター?

ドクター・グロッセンバッカー: 勿論無いわ。私に秘密は無い。

エージェント・オコナー: ここは財団ですよ、ドクター。誰もが秘密を抱える。


インタビュー転写 ― SCP-5002無力化調査 ― 2019年12月14日

インタビュー対象: 兵士ジョセフ・ロウリー

エージェント・オコナー: ウィングGの警備室について教えてください。

兵士ロウリー: 構いませんよ。あれは曲がり角に有りますから、両方の廊下をはっきり見る事ができます――一方は収容チャンバーの正面口まで、もう一方は職員宿舎と厨房まで。収容チャンバー毎にビデオ画面が有り、システムがキーカードによる入退出を記録しています――セルとウィングGのメインドアの両方も。

エージェント・オコナー: 貴方のシフトが終わるのは午前7時半と仰ってましたね。では、始まるのは?

兵士ロウリー: 昨晩の午後11時半、いつもどおりです。

エージェント・オコナー: 大分長いですね。ずっと警備室に居るんですか?

兵士ロウリー: ええ。まあ、煙草休憩は別ですが。

エージェント・オコナー: それはいつ頃に?

兵士ロウリー: そんなふうに見ないでくださいよ。低危険度の収容案件ですし、ドクター・ヤウも認めています。皆知っている事ですよ、毎晩午前2時に一服して戻る、何ら問題有りません。

エージェント・オコナー: では昨晩はどれくらい持ち場を離れていましたか?

兵士ロウリー: 10、もしかしたら15分でしょうか? 毎晩そんなものです。それに正面口をロックしてしまえば、誰もブザーを鳴らさないではウィングGには立ち居れません。自分にはお見通しと言うわけです。

エージェント・オコナー: つまり、貴方が居ない間も外部からは誰もウィングGに入れないと? 既に内部に誰かが居たという事しか有り得ないと?

兵士ロウリー: ええ。もし、つまり、レベル5クリアランスでなければですが。その通知を受けたかどうかも分かりませんが――、一回も来ていないので。

エージェント・オコナー: クリアランスについてですが、キーカードはどうなんでしょう。貴方はメインドアには入れますが、収容チャンバーには入れない、間違い無いですね?

兵士ロウリー: Dクラスセルを除いては、ええ、そうです。カレンだけがスキップのセルに立ち入れるキーカードを持っています。

エージェント・オコナー: 昨晩、彼女は立ち入りましたか?

兵士ロウリー: いえ、昨夜のドアの記録には何も。貴女が来る前に確かめましたが――毎日中央に記録を送らなくてはならないので。シフトの開始から、朝にD-4986を連れて行くまでは全てのセルが常にロックされていました。そして、自分が唯一メインドアを開けた人物でした。先ほど述べた通り、午前2時に。本当のところ、昨夜は誰も見てません――カレンとマイケルは自分が来る前に私室に戻っていたんでしょう。

エージェント・オコナー: カメラについてはどうですか?

兵士ロウリー: 普段通りです。自分が入った頃にはSCP-5002は寝ていました――前の警備兵は午後11時頃に就寝したと言っていました。SCP-████やSCP-████もセル中で静かにしていましたし、D-4986も目立つ事は何も。全てが判然としません。SCP-5002のセルはロックされており、ウィングもロックされており、自分は誰も見ておらず、カメラにも誰も映らず。一体どうやって彼女は殺されたのやら?

エージェント・オコナー: その為に私が居るんですよ、警備兵。

兵士ロウリー: 確かに。シャーロック・なんとかさん?

エージェント・オコナー: 実際の財団の調査はそれ以上に難しいですよ。シャーロック・ホームズと違って不可能を除外するわけにはいきませんからね、私は。

<ドアが開き、声が聞こえる>

エージェント・オコナー: どうしましたか?

不詳: すみません、エージェント。知らせておかなくてはと。貴女の許可無しにウィングGを立ち去ろうとした者が。

兵士ロウリー: ああ、今考えると、カレンはキーカードの複製を作っていたのかもしれません。それならSCP-5002に立ち入れる他の人物も居るでしょう。

エージェント・オコナー: 本当ですか? その人物は一体?

不詳: マイケル・シンプソンです。

兵士ロウリー: マイク・シンプソンですよ。

インタビュー転写 ― SCP-5002無力化調査 ― 2019年12月14日

インタビュー対象: 次席研究員マイケル・シンプソン

次席研究員シンプソン: こんなのふざけている! 僕をDクラスの様に閉じ込めておく権限なんて有るのか!

エージェント・オコナー: 申し訳有りません、マイケルさん――マイケルさんで良いですね? 残念ながらインタビューが終わるまでは誰にもウィングGを離れさせるわけにはいきません。お分かり頂けますか?

次席研究員シンプソン: だが、いつになったら終わるんだ? 今朝は急な会合が有るのに。

エージェント・オコナー: それは誰とですか? 予定を直せるかもしれないですよ。

次席研究員シンプソン: いや! すまない、私的な用事だ、君に知られる謂れは無い! 何も話せないぞ。

エージェント・オコナー: ええ、それで構いません。了承しました。では、会話しましょうか――事を早急に済ませる為に?

次席研究員シンプソン: あ、ああ。それが良い。ありがとう。

エージェント・オコナー: 礼は要りませんよ、マイケルさん。昨晩から初めましょうか。深夜から今朝まではどこに居ましたか?

次席研究員シンプソン: 自分の宿舎に居て、遅くまで論文に取り組んでいたよ。期限が数ヶ月しか無いから。

エージェント・オコナー: 研究と同時にやるとは、簡単にはいかないでしょう。今朝はどうです? つまりSCP-5002が発見された時には。

次席研究員シンプソン: 厨房に居たが、既に朝食は食べ終えていたよ。ジョーがSCP-5002の所のドアを揺らしているのが聞こえたな、二回ほどか。

エージェント・オコナー: 厨房からですか? さぞかし煩い事でしょう。

次席研究員シンプソン: ああ、どこからでも聞こえるよ。煩くて敵わない。とは言え奇妙な事に……

エージェント・オコナー: 何がですか、マイケルさん?

次席研究員シンプソン: 何でもない。ただ、あー、音の通り道について考えていたんだ。それで、ドアが叩かれて、走る音が聞こえ、そしてカレンの悲鳴が。

エージェント・オコナー: なるほど。貴方はその時ずっと厨房に居たと。食器洗浄機の中に包丁が一本見つかったんですが、ご存知ですか? 貴方が使ったのでは?

次席研究員シンプソン: 何! 違う! 僕は行った頃にはもう有ったんだ! 触っちゃいない。

エージェント・オコナー: ええ、問題有りません。残念ながら完全に洗い終わっていたため、染み一つ付いていませんでしたよ。それで、ドクター・ヤウの悲鳴の後には?

次席研究員シンプソン: 収容チャンバーに向かった。ジョーはカレンの肩を掴んで落ち着かせようとしてたな。D-4986も何か言っていた――聞こえなかったけども。ジョーは収容チャンバーに入れされてくれなかったが、僕は見てしまったよ――ああ。あれとは言え、あんまりだ。

エージェント・オコナー: "あれ"? SCP-5002ですか? 面白い、皆彼女を名前か少なくとも"彼女"と呼ぶのに。

次席研究員シンプソン: それは分かっているさ。しかし、あれは"人"ではない。友人などではなく、アノマリーだ。

エージェント・オコナー: 少々酷な扱いですね。

次席研究員シンプソン: プロトコル通りさ。あの実体はSCP-5002 ―― SCP-1571やらSCP-1207やら、あるいは他のどんな収容されているアノマリーとも大差無い。身動きして喋るからといって、異なった扱い方をするべきではないね。

エージェント・オコナー: つまりSCP-5002とは親しくなかったと?

次席研究員シンプソン: 長期間あの実体について数々の実験をした。それが全てだ。

エージェント・オコナー: うむむ。長期間というのは確かですね。実験も沢山行われたと。ドクター・ヤウは成果を出すよう必死だった?

次席研究員シンプソン: かもしれないな。管理官からの伝言も度を越し気味だった。情報更新せよ、実例を寄越せ、他にもあれやこれや。ただ、カレンさんはそこまで気にしていなかった。彼女は良い上司だ――多分僕が知ってる中では一番だろう。ちゃんと僕を研究に携わらせてくれし、一人切りでも働かせてくれるし――

エージェント・オコナー: だから貴方にキーカードの複製を渡したと?

次席研究員シンプソン: ああ、まあ、そうかな。だが、僕は殆ど使った覚えが無い。単に……

エージェント・オコナー: 万が一の為?

次席研究員シンプソン: うん、その通りだ。

エージェント・オコナー: 分かりました。SCP-5002の実験についてもう少し説明して頂けますか。



実験番号: SCP-5002-7-R

日付: 2017年5月14日

場所: サイト-06、ウィングG高耐久実験室

参加者:

ドクター・カレン・ヤウ ― サイト-06、主席研究員
マイケル・シンプソン ― サイト-06、次席研究員
兵士ジョセフ・ロウリー ― ウィングG、警備兵
D-2825 ― ウィングG、Dクラス職員

SCP-5002実験文章: すると、Dクラス職員は歩み寄った機械のボタンをそれぞれ押した。順番は次の通り。赤、緑、赤、緑、緑、緑、赤、赤、緑、赤、赤、緑。そこで彼女はやめた。

<ビデオ開始>

<ドクター・ヤウと次席研究員シンプソンはウィングG安全実験室内に居る。その隣にはSCP-5002が実験台に座っている。>

次席研究員シンプソン: 2017年5月14日、実験番号SCP-5002-7-R。時刻は……午後11時45分。

D-2825: <カメラ外>な、何で、こんな夜中にやるの? ああ!

兵士ロウリー: だから俺と一緒に居られるわけだ、お嬢さん。

ドクター・ヤウ: 優しくね、ジョー。

兵士ロウリー: 申し訳有りません、ドクター。

ドクター・ヤウ: カレンと呼んでちょうだい。まあ良いわ。D-2825は前にもやっているからその時の手順を知っているのね。ただ、このサイトの他の現実改変アノマリーによる妨害の恐れ最小限にする為に夜間実験にしたの。

次席研究員シンプソン: <ドクター・ヤウへ>安全実験室のSRAはオフラインです。<カメラへ>この実験の焦点は二つ。まず、実体が被検対象と物理的に同じ空間に居る事。そして、実体が文章を再使用できるかどうかです。

ドクター・ヤウ: 名前を使って構わないわ、マイケル。

<次席研究員はカメラをSCP-5002とD-2825両名を映すように調整する。兵士ロウリーがDクラスの隣に立っている。D-2825の1メートル前、カメラの近い場所にテーブルが置かれている。テーブルの上には赤と緑の電子的ボタンを備えた装置が置かれている。>

次席研究員シンプソン: ジョー、D-2825を解放してやってくれ。

兵士ロウリー: こやつ、先程自身のセルで不審な動きを。賢明な判断と言えますか?

ドクター・ヤウ: 良いのよ、ジョー。やってちょうだい。

兵士ロウリー: 貴女に従いますよ、ドクター……カレン。

<兵士ロウリーはD-2825から手錠を外して距離を取るが、彼女は動かない。次席研究員シンプソンは、身体的・視線的接触を避けつつ、SCP-5002の前の実験台に小さな装丁した冊子を置く。>

次席研究員シンプソン: 実体は実験文章を読むように。

ドクター・ヤウ: まったく、マイケルったら。<SCP-5002へ>やってくれるかしら?

<SCP-5002は冊子を開き、実験文章を読む。D-2825は装置に近付き、ボタンを文章に記された通りの順番に押した。>

SCP-5002: なんとまあ魅力的な。あんな句読点の使い方は信じられないけど、その文章の振る舞いを実際に見るなんて中々無いねぇ。

次席研究員シンプソン: 実験参加者は静かにしていなさい。

ドクター・ヤウ: 同僚を許してちょうだい。<D-2825へ>どうだったかしら?

D-2825: だ、大丈夫、だと思う。何を読んでいたの?

SCP-5002: あんたの人生そのものかねぇ。あたしが読書する為にこの娘を連れてきたのかい?

次席研究員シンプソン: 実体は同文章を再度読むように。

<SCP-5002は次席研究員シンプソンを見つめた後、冊子を読む。D-2825は動かずにSCP-5002を観察している。>

次席研究員シンプソン: 作用無し。我々の仮説通りですね。

SCP-5002: 本毎に一回だけ起きるって考えてるわけかい?

次席研究員シンプソン: 実験参加者は静かにしていなさい!

SCP-5002: 研究者君に聞きたいんだが、あんたも参加者じゃないのか?

<兵士ロウリーが笑う。ドクター・ヤウが微笑む。次席研究員シンプソンは実験台の冊子を取り去る。>

次席研究員シンプソン: 実体は同文章の別の複製を読むように。

<次席研究員シンプソンは次の冊子を実験台に置く。SCP-5002がそれを取り上げて読み始める。D-2825 はテーブルの近くに立ったままだが、ボタンは押さない。>

ドクター・ヤウ: 別複製でも作用は無し。

次席研究員シンプソン: 指示された通りに読んでいるという前提は有りますが。

ドクター・ヤウ: それは妥当な推測でしょう、マイケル。

次席研究員シンプソン: なら、今夜の最後の実験に進みましょう。

<次席研究員シンプソンは実験台から第二の冊子を手に取り、標準財団編集用ペンで書き出す。次席研究員シンプソンは冊子を開いてカメラに向ける。編集された文は次のように読める。>

編集済み実験文書: ████Dクラス職員は歩み███機械のボタンを████押した。順番は███████緑、██緑、██緑、██赤、██赤、██緑。そこで███やめた。

<次席研究員シンプソンはドクター・ヤウと編集点を確認し、編集済み文章をSCP-5002の前に置いた。>

次席研究員シンプソン: 実体は編集済み文章を読むように。

SCP-5002: はあ、なんて面倒な。ええ、ええ、参加者は静かに、分かってるさ。

<SCP-5002は編集済みの冊子を読む。D-2825は装置のボタンを次の順番に押す。緑、緑、緑、赤、赤、緑。編集済み文章と合致する。D-2825の動きはぎくしゃくとしてぎごちない。>

次席研究員シンプソン: 文章の修整により異常作用が再生されましたね。

ドクター・ヤウ: 面白い。新たな考えが湧いてきたわね。<D-2825へ>どういう感じだった?

<D-2825は泣いているように見える。>
D-2825: ボタンを押したくなかったのに。どうして? 彼女は何をしたの?

次席研究員シンプソン: 実験終了ですね。兵士、Dクラスを拘束してください。

<兵士ロウリーはD-2825に手錠を掛ける。彼女は抵抗するが、難なく拘束された。>

D-2825: やめて、実験は終わってない――行きたくない! あそこに戻さないで!

兵士ロウリー: 言った通り、厄介な女です。

ドクター・ヤウ: セルに戻してくれるかしら? 丁寧に、ね。

兵士ロウリー: 勿論自分が連れて行きます。

ドクター・ヤウ: ありがとう、ジョー。

兵士ロウリー: 感謝など不要ですとも。

<兵士ロウリーが弱く抵抗するD-2825と共に実験室を立ち去る。>

ドクター・ヤウ: 可哀想に。ドクター・グロッセンバッカーを呼びましょう。マイケル、ミス・テイスティングスをチャンバーに送り返してくれるかしら?

<次席研究員シンプソンが僅かに動揺したように見える。彼はSCP-5002に付いて来るように示し、カメラに近寄って電源を落とす。>

SCP-5002: あの娘が拘束されているときにあたしが読み出したらどうなるかしらねえ?

<ビデオ終了>



インタビュー転写 ― SCP-5002無力化調査 ― 2019年12月14日

インタビュー対象: 主席研究員カレン・ヤウ

エージェント・オコナー: お時間を割いてくれる事に感謝致します、ドクター・ヤウ。SCP-5002についての考えを聞きたいのですが?

ドクター・ヤウ: アノマリーとして? それとも被験者として?

エージェント・オコナー: お好きな方で。

ドクター・ヤウ: ええ、アノマリーとしては少々手間が掛かったわね。作用が発現する方法を――何が文章を実体化させているか正確に――突き止めるのにも暫く掛かったわ。現実錨の影響下で収容中に新たな文章を書かせ、それ全部を私達とRAISAそれぞれが査読して、意図せぬ結果を招かない事が確認できてから出版する。相当時間が掛かるわ。

エージェント・オコナー: 収容チャンバーからは原稿が回収されていますね。

ドクター・ヤウ: ええ、SCP-5002は小説を書いていたわ。より詳細な分析ができると考えて、彼女にそれを勧めたの。準備には時間が掛かるけど、もっと色々実験できてたら、アノマリーが発現する際の特異性の度合いを明確にできたでしょうに。失ったものは大きいわ、研究時間という意味でね。

エージェント・オコナー: どういった小説でしたか?

ドクター・ヤウ: 普段の彼女の作品とは違うわよ、勿論安全の為にね。必要なのは実験できる物だったから、Dクラス被験者の日常と心情に関する内容だったの。暴力的なのも劇的なのも無し。彼女の小説に比べると遅い展開で精神的な物ね。殆ど田園風景と言って良いかしら。

エージェント・オコナー: 無許可の文書は無かったという事ですね? 彼女の死のような類の物は何も無かったと?

ドクター・ヤウ: 無いわ。そういうのには非常に慎重にやってたから。だから本当に驚いたの。

エージェント・オコナー: そして彼女の過去の作品にも類似していない?

ドクター・ヤウ: 些細な点ですらも。どちらにせよ、出版後に作品を読んで発生する作用は一回切り。同一の物を再読してもアノマリーは再発生しないわ。

エージェント・オコナー: SCP-5002はどういう被験者でした?

ドクター・ヤウ: 実験には協力的だったわ。共同で実験をしていた、とまで言えるわね。収容されている事にはうまく適応してた部類で、暴行や逃走の経歴は無し。知的で、正直で、自信が有って。

エージェント・オコナー: 概ね、彼女を気に入っていたように聞こえますね、ドクター・ヤウ。

ドクター・ヤウ: <咳をする>言わせてもらうけど、状況が違えば、そうだったでしょうね、エージェント・オコナー。

エージェント・オコナー: 彼女に特権を与えていたと?

ドクター・ヤウ: どういう意味?

エージェント・オコナー: セル内のジャック・ダニエルですよ。貴女の指示ですか?

ドクター・ヤウ: いいえ、全く。被験者達は公平に扱うようにしているわ、エージェント・オコナー。私もバカじゃないわ。どんな酒も薬物も、エマは手に入れられなかった。定期的にセルを検査してるし、私達の誰も彼女にそんな物をやっていないと保証するわ。

エージェント・オコナー: 彼女とうまくやっていけてない者も貴女のチームには居たようですが?

ドクター・ヤウ: ジョーの事? ええ、彼は頑固で、ときたまスキップにちょっかいを出そうとする事も有るけど、大層柔和な質でもあるわ。彼はしないわ――ええ、こんな事は。

エージェント・オコナー: マイケル・シンプソンも? SCP-5002にはとても冷淡なようでしたが。

ドクター・ヤウ: ええ、確かにそうね。実験外では一言も彼女と会話しないし、エマとも呼ばなかった、面白い事に。彼は純粋に堅物だと言えるわね、とは言え、ずっとそういうわけではなかったの。

エージェント・オコナー: と言うと?

ドクター・ヤウ: 彼が私達に加わった時はもっと落ち着いていたわ。それから数週間後、エマがやって来ると心境に変化が有ったみたい。引っ込み思案になったの。

エージェント・オコナー: 理由は存じていますか?

ドクター・ヤウ: 分からないわ。彼を気に掛けた事は有ったけど、定期の心理評価では軽度のストレス以外何も無し。

エージェント・オコナー: その写しは貰えますか?

ドクター・ヤウ: ごめんなさい、私自身も確認はしたけど、中央に送られてしまってたの。貴女からサイト管理官に聞いてみれば、恐らくは貰えるわ。

エージェント・オコナー: それで思い出しました。マイケルさんのストレスは、SCP-5002に関する成果を出さなくてはならないという重圧では?

ドクター・ヤウ: <笑う>そんな事気付かなかったわね。懸命に働いているとは言え、過度の重圧を掛けた覚えは無いわ。

エージェント・オコナー: サイト管理官からも?

ドクター・ヤウ: 私の知るかぎりでは。

エージェント・オコナー: 本当ですか? 医務官が言及しています。

ドクター・ヤウ: ドクター・グロッセンバッカーは他のウィングについて考えていたんじゃないかしら。彼女は常にあちこち行き来しているから。

エージェント・オコナー: 定期的にウィングGに来ると?

ドクター・ヤウ: 時々、スキップがゴタゴタを起こしたらね。サイト全体の主席医務官CMOに昇進してからは数が減ったけれども。

エージェント・オコナー: かなり最近の昇進ですよね? しかも急な。彼女の仕事振りについてはどのような意見ですか?

ドクター・ヤウ: 素晴らしいわね。対応力が有って、助けになる。心理評価は妥当で、私の意見も受け入れる。そして真に人々を気遣ってくれている、私が尊敬する点ね。去年居たDクラスのD-2825は衰弱してたの。本当に恐ろしいくらいに。悲鳴は上げるし、不眠にはなるし。最終的には人員交換になったけど、ドクター・グロッセンバッカーは彼女に色々してあげてくれたわ。もう大分前の話になるわね。

エージェント・オコナー: しかし、ドクター・グロッセンバッカーはウィングGには立ち入りできないと?

ドクター・ヤウ: ええ、メインドアでブザーが鳴るわね。他の人と同じく。

エージェント・オコナー: そうですか。貴女と兵士ロウリーのみがセキュリティーシステムを操作できた人物なのですね。

ドクター・ヤウ: そうね。ジョーには監視映像や記録の閲覧権限だけが有って、私だけが収容セルに立ち入りできるキーカードを所持しているわ。

エージェント・オコナー: 貴女がキーカードを渡したマイケルを除けば、ですよね?

ドクター・ヤウ: あら、ええ。ごめんなさい。でも、彼は一度も――記録には無いと思うわ。

エージェント・オコナー: では紛失した可能性は?

ドクター・ヤウ: いいえ、彼はそんなに不用心じゃないはずよ。

エージェント・オコナー: うむむ。良いでしょう。昨晩と今朝の貴女の動向を教えて頂けますか?

ドクター・ヤウ: ええ。私の宿舎に戻っていたわ、ジョーがシフトに入る前には。それからしばらくして、恐らくは夜中頃に眠りに落ちたわね。

エージェント・オコナー: そして、それからは私室を出ていないと? 誰も入って来ず、何も聞こえなかったと?

ドクター・ヤウ: その通りよ。6時半に目が覚めて、歯を磨いてたらジョーがドアを激しく叩いてきたの。SCP-5002が緊急事態だ、キーカードが要るって言っていたわ。カードを渡して、歯磨き粉を吐いて、廊下で彼の後を追ったわ。それで、わ、私は――

エージェント・オコナー: 落ち着いてください、ドクター・ヤウ。

ドクター・ヤウ: 恐ろしかった。悲鳴を上げたんだわ、今考えてみると。彼女を見ると、血だらけで。感情的過ぎるって思うかもしれないけど、ウィングGでの生活は本当に平穏だったから。私達は――私は普通――あんな事経験してなくて。それでジョーに連れ出されたんじゃないかしらわ。彼の手が肩に添えられていて、何かを言っていたのは覚えているわ。頭がこんがらがってた。それでマイケルが走って来て、それからあいつの声も聞こえた!

エージェント・オコナー: 誰ですか?

ドクター・ヤウ: D-4986よ。エージェント・オコナー、名指しするのもなんだけど、これは間違い無いわ。彼の表情を忘れる事は無いでしょうね、その上こんなセリフまで。「こりゃあ、あの売女に相応しい末路だぜ」。

エージェント・オコナー: それは大した証拠とは言えませんね、ドクター。

ドクター・ヤウ: ええ、分かっているわ。でも貴女、彼がDクラスになった理由は知ってる?

インタビュー転写 ― SCP-5002無力化調査 ― 2019年12月14日

インタビュー対象: D-4986

エージェント・オコナー: 殺人に関する七件の有罪判決。加重暴行傷害も一件。他に三件、未訴訟の殺人容疑。全てが胸部・胴部周辺への複数回の刺突によるもの。

D-4986: ああ、周辺は要らんがな。全部俺がやったよ。んで、くれぐれも信じて欲しいんだがね、まあいつらにはもう一度やってやりたいね。あのゴミカス共にはそれくらいが似つかわしいぜ。

エージェント・オコナー: SCP-5002を殺害しましたか?

D-4986: いや。

エージェント・オコナー: しかし、彼女の死を望んていましたね。

D-4986: ご明答だぜ。あいつが死んでくれて清々するよ。できるなら俺が手を下してやりたかったが。

エージェント・オコナー: 何故ですか?

D-4986: 何故かって? おいおい、あんたそんな事も分からねえのか? あのババア、去年さんざ俺を痛め付けてくれたんぜ。憎いに決まってらあ。

エージェント・オコナー: 痛め付ける、とはどういう意味です?

D-4986: 実験は見たか? ええ? ありゃあバケモンだ。誰にも俺をこき使わせた事は無いが、あの女は――あいつが自分で書いた本を読めば、俺は何だってさせられちまうんだ。

エージェント・オコナー: どのような事ですか?

D-4986: 何でもさ! ルームランナーを倒れるまで走らされるだろ。一度も言っていないような事を喋らされるだろ。夕方いきなり眠らされるだろ。そして毎回、俺がそれを選んでやっているように感じるんだ。俺は自分を制御しているつもりだったが、本当はあの女がいつも制御していたんだ。あの悪意の塊とヤウ――カレンと呼んで、だと――は手を組んでいたしよ。

エージェント・オコナー: それはどういう意味でしょう?

D-4986: あの女は新しい実験を考え出してはヤウを手助けしていたのさ。屈辱的な類の奴をな。俺を泣き喚かせ、許しを請わせるだの。実験室でストリップさせるだの。電線――通電してると思ってたんだぞ――を掴ませるだの。一回、大声で文書を読んで、俺が奴に動きを強制されているのを分からされた事も有ったな。大方、自分の能力に夢中になっていたんだろう。

エージェント・オコナー: それで彼女を憎んでいたと。

D-4986: ああ、だが、俺はやってねえぜ! あいつは憎いが、それ以上に怖かったんだ! 俺が俺じゃなくなっちまう。最初にそうなったときゃあ、セルに閉じ籠もって警備と殴り合い、朝飯まで吐いた。その後、全部あの女が書いた事だと気付かされた。本当に気が気じゃなかった。何を信じる事ができるんだ? 自分ですら信じられねえ。つまりよ、D-2825が狂ったのも当たり前さ。もし自分の行動も、決断も、思考も、全部が全部他人に操作されたものだったらどうなると思う? だから、勿論、あいつが死んで嬉しいぜ。ようやく、自分が自分自身だと信じられるんだからよ!

エージェント・オコナー: しかし、殺してはいない?

D-4986: ねえよ。

エージェント・オコナー: 昨晩はどこに居ましたか?

D-4986: セルだよ。他にどこに居られるんだよ? 監視カメラ着いてるだろうが?

エージェント・オコナー: 昨日までで、最後に厨房に行ったのはいつですか?

D-4986: <黙る>分かんねえ。昨日の夕飯だろ。

エージェント・オコナー: 厨房から包丁を盗みましたか?

D-4986: いんや。警備が見てるんだ、その上セルまで調べられる。

エージェント・オコナー: ジョセフ・ロウリーについてはどう考えていますか?

D-4986: 他に比べりゃマシだが、嫌な奴に変わりは無えな。ヤウが近くに居たら別だが、自分を良く見せたいんだろう。何でそんな事俺に聞くんだ?

エージェント・オコナー: 刺されて殺された人物が居り、貴方はその周辺で唯一の刀傷殺人犯です。

D-4986: 戯言だな。あいつが俺に自分を殺させたってのはどうだ、自分の小説みたいによ? どっちにしろ、俺も5002もセルに閉じ込められてて、どっちも鍵なんか持ってねえ。壁を通れる強姦魔と話すべきじゃねえのか?



アイテム番号: SCP-████

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-████は標準ヒューマノイド収容チャンバーに収容され、設置されたスクラントン現実錨が常時起動されます。SRAの誤動作・未稼働時には、SCP-████は即座に沈静化され、収容環境が回復されるまでその鎮静状態を維持されます。

説明: SCP-████は34歳のヒューマノイド実体であり、自由自在に固体を通過する能力を備えています。 SCP-████はロバート・ゲイツとして知られており、連合王国カーライルの住民でした。

SCP-████の異常能力は自身の肉体と衣服に限定されており、他の物体には拡張できません。実験ではSCP-████が抵抗無く通過できる素材の限界は全く示されていません。詳細については、下部のテストログA-Kを参照してください。

財団に収容されるまでに、SCP-████は30人を超える女性への強姦・性的暴行に関与しました。典型的には、被害者は自宅に居るところを襲撃されており、SCP-████の出入りの形跡は一切有りません。被害者の一部は、数週間から数ヶ月に渡っての複数回の襲撃を受けています。

SCP-████は著しい反社会性パーソナリティ障害並びに自己愛性パーソナリティ障害の兆候を示しており……



インタビュー転写 ― SCP-5002無力化調査 ― 2019年12月15日

インタビュー対象: SCP-████

SCP-████: 何で来たか分かるよ。

エージェント・オコナー: 本当に?

SCP-████: 僕が彼女を、エマを殺したか知りたいんだろ?  包丁を彼女の肋骨の間に滑り込ませ、彼女の命を漏れ出させたのか。

エージェント・オコナー: 貴方の知識をひけらかして、私を驚かせようとしているのですか?

SCP-████: そうやって頑なに振る舞って恐怖を抑え込もうとしているんだね? 人間はお喋りなんだよ、探偵ちゃん。殊に、自分が動物だと思っている物の周囲ではね、あるいは備品とか。

エージェント・オコナー: そして、貴方は人間として認識されたいと。

SCP-████: いやあ、僕は獣と呼ばれたって構わないよ。特に、餌にはね。

エージェント・オコナー: 捕食者と言えど、檻の中では無害です。

SCP-████: 僕が檻の中に居ると信じているのかい? いつでもここから出て、成すがままに、なんて有り得ないって?

エージェント・オコナー: 実験ログが示すところではそんな事はできそうにないでね。

SCP-████: 君達の大好きな現実錨か。それが好意に値する物であるか教えてあげられるよ、探偵ちゃん。

エージェント・オコナー: では何故今ここを出ていかないのですか? 私を驚かしたらどうです。

SCP-████: 君は自分自身に僕ができっこないと言い聞かせているけど、それを信じ切れているわけでもないね。実際、君は僕にそれをやらせようとしているくらいだ。僕が壁を通り越しても、少なくとも君にとっては予想の内だろう。君は何か確かだと思う事が有るらしい。でも、僕は確信されたくないんだ、探偵ちゃん。君を驚かせるつもりも無い。君には疑っていて欲しいんだ。

エージェント・オコナー: 言い訳にしか聞こえませんね。

SCP-████: なら、どうして声が震えているのかな? 皆、自分を統制できているつもりらしいけど、捕食者は恐怖の匂いに敏感なんだ。僕に隠し立てする事はできないよ、探偵ちゃん。誰にもできない。

エージェント・オコナー: エマ・ヘイスティングスを殺害したのは貴方ですか?

SCP-████: 本題に入ったら、もう気の利いた話は無しかい? まあ良いさ。君の好奇心を満たしてやれるよ。僕は彼女を殺していない。怒り狂って刺すなんて全く僕の流儀じゃない。無計画で無秩序だ。

エージェント・オコナー: 彼女を襲撃しましたか? 犯そうとしましたか?

SCP-████: いや。彼女のアノマリーは限定されているが、わざわざ関わって危険を犯す必要は無いね。僕にはもっと弱い獲物が沢山居るんだ。誰でも分かるくらいにね。

エージェント・オコナー: 彼女を恐れていたと?

SCP-████: 違うよ、探偵ちゃん。しかし、彼女の実験ログを読んだんでね。全く、ドクター・ヤウは夜の自室にファイルを置きっ放しにするべきじゃないね。エマは自分の能力で僕を脅かそうと試みたかもしれないが、所詮下らない能力だ。僕は彼女を恐れていなかったよ、まあ彼女も僕を恐れていなかっただろうけどね。

エージェント・オコナー: そして、貴方は恐怖に興奮を覚えると、言うまでもない事ですが。

SCP-████: 言うまでもなく! 君には多分どういう事か分からないだろう。女性達が常に僕の事を考えているのが。僕を探しているのが。安全に思える事は無いんだ、壁に囲まれていようと、いついかなる時であろうと。僕は彼女達を壊し、崩れ落ちる様を見られるんだ。この僕によってねね。僕は彼女達の一部なんだ、いつだって。

エージェント・オコナー: この人非人が。

SCP-████: 随分感情的に聞こえるね、探偵ちゃん。どんな感触か想像しているのかい? 君も味わいたいのかい? 僕が女性の中に入ろうと思えば、包丁なんて使って切り開く必要は無いのさ。単に彼女の中の、どこにでも達する事ができるんだから。

エージェント・オコナー: 十分です。貴方は役に立ちません。

SCP-████: 君の事を考えようかな、次にサイトを散歩する時は。教えてよ、探偵ちゃん、どこで寝るのかをさ?


インタビュー転写 ― SCP-5002無力化調査 ― 2019年12月15日

インタビュー対象: サイト管理官イヴリン・メイ

エージェント・オコナー: 邪魔してしまって申し訳有りません、管理官。

管理官メイ: いいえ、大丈夫ですよ、エージェント。重大性は分かっています。ただ――貴女、やる事が多すぎて、くたくたになったのに、更に面倒事が舞い込んでくる経験は有りますか? と言うのもですね、昨日は誰かがサイト敷地のすぐ外に侵入口が見つかったのです。多大なセキュリティー違反です。誰も出入りはしていないようなのですが、それでも大量の書類仕事が。まあ、貴女の問題ではありません。それで、どのような手助けが要りますか?

エージェント・オコナー: ええ、少々微妙な問題なのですが。ウィングGのSRAの記録を確認させて頂きませんか。故障や異常動作が有ったか知りたいのです。

管理官メイ: どうして――ああ。彼女なんでしょう、彼女はやりたいようにやりますからね。貴女も知っておいた方が良いでしょう。どちらにしろ、RAISAには叱責される事になりそうですが。

エージェント・オコナー: これは純粋に私の調査の為です。

管理官メイ: <咳をする>ええ、ウィングGの現実錨にはいくらか問題が有ります。何個かは誤動作していて、何個かは露骨に故障しています。確かに、私はこの情報の伝達を――セキュリティーレポートを書くのを――抑えていました。何も問題無いと思っていたのですよ、しかし今は――ああ。貴女は関連が有ると――あのゲイツがSCP-5002の殺害に関与していると?

エージェント・オコナー: 確信はしていません。SCP-████は壁を通り抜けられたでしょうが、包丁を持ち込む事はできなかったはずです。

管理官メイ: 既にセルの中に有ったのかもしれませんが? SCP-5002が盗んだのでは。

エージェント・オコナー: うむむ、有り得はしますが。しかし、どちらにしろ、記録を確認したいですね。

管理官メイ: やってみましょう。ただ言っておきますが、SCP-5002の現実錨には問題が有りませんでした――彼女のセル内にはアノマリーが存在できなかったのです。

エージェント・オコナー: セル内はそうでも、その壁については?

管理官メイ: いえ、現実錨はチャンバーの内装にまで影響しないでしょう。しかし、SRAの問題は他のセルでのみの問題です――SCP-████やSCP-████、恐らくは未使用のチャンバーいくつかも。SCP-5002は確実に収容されていました。記録がそれを裏付けてくれるでしょう。

エージェント・オコナー: ありがとうございます。直近のウィングGの心理評価記録も頂けますか?

管理官メイ: 少なくとも要約は。何故必要なのですか?

エージェント・オコナー: ドクター・ヤウ曰く、部下である次席研究員がストレスを抱えていたと。

管理官メイ: カレンらしいですね。いつだって優しい。

エージェント・オコナー: 貴女がストレスの原因だという印象を受けましたが。ドクター・ヤウに、SCP-5002についての成果を出せと強いたのですか? 更新要求やら伝言やらで?

管理官メイ: そうかもしれないですが、普段以上の事をした覚えは有りません。カレンの研究の進みが早かったわけではありませんが、それに不満は有りませんでした。

エージェント・オコナー: 貴女とSCP-5002の関連性にも関わらず? 貴女はエマ・ヘイスティングスの異常性質特定班の一員であり、彼女の初期回収を監督していたと書かれていましたが。

管理官メイ: この仕事で私は多くのアノマリーの分析・回収に携わってきました、エージェント、どんな事でも私を追求するのはやめて欲しいですね。

エージェント・オコナー: 貴女を犯人候補から除外したいだけですよ。貴女のクリアランスなら、ウィングを問わず収容チャンバーやセキュリティー記録に侵入できますからね。

管理官メイ: しかし、一度でも監視映像やドアの記録がウィングに送られてしまったらどうします。私があそこに居たなら、カレンや警備兵が映像に私を見ているでしょうし、私のキーカードによる立ち入りも確認されます。

エージェント・オコナー: レベル5でもですか? それは知りませんでしたね。ご協力感謝致します、管理官。最後に、単に万全を期すためですが、14日の深夜以降はどこに居たか教えて頂けますか?

管理官メイ: ロンドンに帰って面会をしていました。サイトに戻ったのは午前3時頃です。

エージェント・オコナー: 運転手の証言は?

管理官メイ: 今回運転手は居ませんでしたよ、エージェント。これは個人的な面会です。

エージェント・オコナー: ああ。申し訳有りませんが、誰と面会をしていたのですか?

管理官メイ: 財団とは関係の無い事です。

エージェント・オコナー: <黙る>できれば、内容に関わらず出席者を確認したいのですが。

管理官メイ: <咳をする>良いでしょう。ナディンが貴女に何も伝えていないとは驚きです。知る必要が有るととは思えませんが、離婚弁護士と会っていたのです。来年の調停の為の計画が必要だったのです。彼の詳細も教えましょうか。

エージェント・オコナー: 詮索をして申し訳有りません、管理官。

管理官メイ: いえ、構いません。私の仕事は知っています。単に――疲れたんです、分かりますか? ピーターと私は、私達はうまく――娘を亡くしたんです、エージェント・オコナー。彼も私も色々試しましたが――まあ、1月に調停となったんです。これがロンドンに行き、サイトに戻ってきた理由です。

エージェント・オコナー: そして眠りに就いたんですね?

管理官メイ: そういう事になりますね。6時に目覚ましが鳴り、また次の日の災厄に備える、と。ドクター・ヤウに呼ばれた時には、他に三つ緊急事態を抱えていたのですよ、信じられますか。

エージェント・オコナー: たった一時間のうちにそれだけも。

管理官メイ: いえ、もう少し時間には幅が有りましたよ。カレンが私を呼んだのは7時半以降です。更にもう少し後かもしれません。

エージェント・オコナー: 本当ですか? 死体が見つかったのは7時直後です。ドクター・ヤウはすぐに貴女を呼びに行ったのかと。

管理官メイ: いえ、確かにもっと遅れています。彼女もストレスを感じていたと言っていましたね。それで私を呼ぶのを躊躇ったのでは?

エージェント・オコナー: うむむ。彼女を調べる必要が有りそうですね。


サイト-06心理評価 ― 2018/19年要約 ― ウィングG

担当者: ドクター・ナディン・グロッセンバッカー

被験者 職務 評価結果 備考
カレン・ヤウ ウィングG監督者 通過 無し
マイケル シンプソン 次席研究員 要注意 ストレス有り、内向的
デヴィダス・セングプタ 警備兵 ― 朝シフト 通過 無し
オーウェン・ンウォーカ=ジョーンズ 警備兵 ― 昼シフト 通過 無し
ジョセフ ロウリー 警備兵 ― 夜シフト 通過* ウィングG監督者の言及を参照せよ
D-2825 Dクラス職員 要注意 精神崩壊、ウィングから除外
D-4986 Dクラス職員 要注意 攻撃的、反社会的
SCP-5002 無し 通過 無し
SCP-████ 無し 通過 無し
SCP-████ 無し 失敗 [機密情報]


インタビュー番号: SCP-5002-56

日付: 2019年5月6日

インタビュー者: Dr. カレン・ヤウ

ドクター・ヤウ: 小説はどんな感じかしら?

SCP-5002: 悪くはないね。書き終えるまでは分からないが、まあ今までのところは満足してる。無論、二人の読者のうち、片方だけにとってだが。

ドクター・ヤウ: <笑う>読者の反応が貴女にとってそんなに大事なの?

SCP-5002: どっちとも言えるさね。必要だから書き始めたが、熱烈な読者達の反応を楽しんでないと言ったら嘘になる。時には、同時に二つの物を書いてると思う時も有る――読者の為とあたしの為と。

ドクター・ヤウ: それは貴女の能力に関する理解について言っているのかしら? 自分自身の為に事象を創造していたと?

SCP-5002: その質問何度目だろうねえ。

ドクター・ヤウ: この質問の重要性は増すばかりよ。なのに貴女は答えてくれないまま。昔から意図して小説の登場人物を操作していたの?

SCP-5002: 誰が誰を操作するって? 音楽家が音楽を奏でたとき、作曲者があたし達が聞いている音を"操作"したなんて言わないだろう。あたしの登場人物は単なる音楽の譜面さ、読者がそれに命を吹き込む。

ドクター・ヤウ: 読者が登場人物を動かしていると? でも、明らかに彼らを動かしているのは著者よ。

SCP-5002: それは書き手次第さ。あたしはいつだって読者に考えさせるのが好きなんだ、ただ公平さも必要だがね。

ドクター・ヤウ: なら、貴女の小説の特異性を知っていたの?

SCP-5002: 自分の作品が世に放たれた後にどうなるか知ってる作者なんて居るのかい? シェイクスピアは? ヴァージニア・ウルフは? アンネ・フランクはどうだ? 筆を置いたら、後は全てが読者任せだ。

ドクター・ヤウ: でもこの場合じゃあ、貴女も読者なのよ。<咳をする>まあ教えてくれないでしょうね。

SCP-5002: あんたが質問過ぎるのが唯一の原因さね!

ドクター・ヤウ: 分かったわ。そういうつもりなら、話題を変えましょう。不慣れなジャンルの小説を書くのにはどう思っているの?

SCP-5002: 間違い無く、"赤いボタン、緑のボタン"よりゃあ難しい主題に挑戦する事になるねえ。

ドクター・ヤウ: <笑う>以前にやってみた事は?

SCP-5002: 読者達は特定のジャンルを待望しているって分かっているのに、それに抗うのは難しいよ。エマ・ヘイスティングスの小説を買うって事は、恋愛だの空想だのじゃなくて犯罪調査を期待しているって事なのさ。殺人が無きゃ、それに不満を言うだろうし、かと言って捻りとして付け加えようが、今度はジャンルと合ってないって文句だ。勝ち目は無いね。

ドクター・ヤウ: だから宇宙人が犯罪を犯したりはしないのね?

SCP-5002: <笑う>あたしに似つかわしくないと知っているからね。探偵小説には大抵、最も単純な解答が最も適しているんだ。金銭、愛情、復讐。少なくとも物語の中じゃ、こいつらが殺人の動機たりえるからね。他のじゃ答えよりも問いを増やす事になる。

ドクター・ヤウ: なら、全然違う物を書こうとした事も無いと?

SCP-5002: 一度だけ陰謀モノのスリラーの構想を撃ち出したが、出版社はにべも無しさ。これこそ正に劇的皮肉1と言えるだろうね、あたしが関わった陰謀は予想を遥かに上回っていたから。

ドクター・ヤウ: 私達が何故ここに貴女を留めているか理解して欲しいものだけど?

SCP-5002: 分かってるさ。自由にはなりたいが、あんたらがやってる事も重要だ。それにここに来て良かった事も有る。自分について驚くべき数々の事柄を知られたんだから。あたしの作品が評価されている、いや必要とされている! 下らない噂話にも――つまるところ新聞にも――気を使わなくて済むしね。ここの皆が皆気さくというわけでもないけどね、当たり前だが。

ドクター・ヤウ: ああ、マイケルとジョーが無礼を、でも彼らもうまくやれるようになるわ。私には分かるの。彼らに時間をちょうだい。

SCP-5002: 本当のところ、気にしてないよ。知的な会話をできる相手は一人でも十分さ。

ドクター・ヤウ: 褒め言葉? ありがとう。

SCP-5002: 二度は言わないよ。

ドクター・ヤウ: ええ、それで作業に戻る?

SCP-5002: ありがとう。今厄介なところでね。被験者を主人公にしているんだが、私的には、親切な科学者の描写が居るんだ。だが、それについて現実味が足りないように思えてね。

ドクター・ヤウ: <笑う>どうぞ楽しんで。助言が必要なら教えてちょうだい。


SCP-5002調査情報更新転写 ― 2019年12月16日 ― 継続中

日付: 2019年12月16日

場所: サイト-06ウィングG控室

<記録開始>

エージェント・オコナー: ……そして今日に戻って参りました。そしてまた、私にとっては、嘘吐きだけらけの部屋に座っているという事でもあります。

次席研究員シンプソン: 何?

管理官メイ: どういう事ですか?

エージェント・オコナー: 例えば、兵士ロウリーは煙草休憩について嘘を吐いています。

兵士ロウリー: 何が言いたいというのです?

エージェント・オコナー: 仰ったのよりも長く席を外していましたね、兵士。その上酒まで。

兵士ロウリー: そんな事は!

エージェント・オコナー: 夜中は暇ですからね。貴方はジャック・ダニエルで酔い心地になろうとした。通常なら、貴方は酒瓶をシフト終わりの時に密かに持ち出すところ、SCP-5002を見つけてしまい、貴方は全ウィングが捜索されると理解した。混乱した貴方は、ドクター・グロッセンバッカーが死体を調査している間に収容チャンバーに酒瓶を隠した。

兵士ロウリー: 違う。

エージェント・オコナー: 夜の間、酒瓶はセルの監視映像には写っていませんでしたが、朝以降、つまりちょうど貴方がセルに入ってから写り始めているのですよ。貴方方が嘘を吐くのは自由ですが、私には通じません。もっと言えば、ここに居る正直者は殺人犯ただ一人なのです。

ドクター・ヤウ: 何を言っているの?

エージェント・オコナー: 私が言いたいのは、他の人物と違って、D-4986だけが真実を語っているという事です。人殺しではありますが、私は彼がSCP-5002を殺していないと言ったの信じています。

D-4986: は! あんたが一人目だろうぜ。

管理官メイ: では犯人はSCP-████であると?

エージェント・オコナー: 貴女が彼について言及するとはおかしいですね。問題なのは、各々が嘘を吐いた結果、それらが矛盾し合い、その矛盾が一枚の絵を描き出す、という事です。管理官、貴女の疲労した様子も、少なくとも部分的には演技なのです。とは言え、脅迫状を貰うのは私としても相当疲れる事だと思いますが。

兵士ロウリー: 脅迫状? 何の為に?

エージェント・オコナー: 重要なのは"誰によって?"です。このサイトでウィングを越えて働いている者、SRAの故障している証拠を見つけられている者、SCP-████が収容違反を起こしているという証拠を握っている者、――性的暴行キットを殺人現場に持ち込もうと思った者、D-2825の精神崩壊の原因をSCP-████による継続的襲撃と推定できた者、ドクター・グロッセンバッカーのように。

ドクター・グロッセンバッカー: バカげているわね。

エージェント・オコナー: 説明しましょう。管理官は貴女がSRAの誤作動を知っていると教えてくれました。推測するところ、これが貴女の主席医務官への昇進の裏に有ったのでは?

管理官メイ: そうです。ああ、そうなのですよ。警備記録を書き換え、職員を危険に晒した事をRAISAに告発すると言われたのです。黙っていて欲しければ、このサイトの主席医務官にさせろと。

ドクター・グロッセンバッカー: (ドイツ語で)クソが。

エージェント・オコナー: 管理官、貴女は運が良かった。貴女の真の目的を彼女が知っていたら、彼女が貴女に求める物がどうなっていたか考えてみてください。

ドクター・グロッセンバッカー: どういう事よ?

エージェント・オコナー: 現実錨は誤動作を起こしてなどいません、今もかつても。管理官? 故障は無作為に分布するもののはずですが、貴女の言ではSCP-5002のチャンバーだけは一度もそうなっていません。一方、明白な事に、SCP-████は定期的に脱出しています――彼自身がそう言っているし、D-2825への数々の襲撃がそれを裏付けていています。私の考えでは、貴女は意図的にSRAを停止させ、彼を脱出させるよう仕向けたのです。疑いを逸らす為の"誤作動"は沢山有る一方で、SCP-5002の収容が脅かされる事は無いですからね。更に、貴女は部屋割りを操作した。低危険度ヒューマノイドとは言えないSCP-████をウィングGに配置しなくてはならない為に。彼にSCP-5002を襲って欲しかったのです。彼女を犯し、恐怖させるのが貴女の望みだった。

ドクター・ヤウ: 何て事!

次席研究員シンプソン: エマ! この畜生めが!

管理官メイ: 随分な申し立てですね、エージェント。憶測以上のものを望みますよ。

エージェント・オコナー: 貴女は常にSCP-5002に対する関心を見せていた。しかし、ドクター・ヤウの遅い進捗には特に懸念を示していない。単にSCP-5002が苦しんでいるか知りたかったのです。

兵士ロウリー: レベル5クリアランスを使ったんだ。自分には無いですが――

ドクター・ヤウ: だけど、どうして?

エージェント・オコナー: 私も分かりませんでしたよ、管理官の離婚弁護士と会うまでは。彼は、あの殺人事件の夜、彼女がロンドンに居た事を裏付けてくれました。同時に、自身の姓を戻した事も。イヴリン・メイは以前、イヴ・ホロウェイ――ケイト・ホロウェイの母親だったのです、2017年にSCP-5002のアノマリーによって殺害された人物の。貴女が復讐の為に成した権謀術数の程は知りませんが、管理官、彼女の死が貴女に平穏をもたらすとは思えませんね。

管理官メイ: 何も知らないくせに良くも言えるものですね! 私の娘が殺されたのですよ! あの獣が千回死んだと言えど、足りうるものでは無いのです。

次席研究員シンプソン: どうして貴女は彼女をそんなふうに言えるんだ?

エージェント・オコナー: どうして彼女と言うんです、マイケル?

D-4986: ああ、面倒臭えな。

エージェント・オコナー: 結局のところ、管理官がSCP-5002に包丁を突き立てたわけではないのですが?

次席研究員シンプソン: ぼ、僕は――

エージェント・オコナー: しばらくは見てくれを取り繕ってきたいたようですが、マイケル、ヒビが入りましたね。貴方が感じていたストレス、それは論文などではありません。異常ヒューマノイド実験に割り当てられるまでの貴方に問題は無く、それ以降に変化が有った。ドクター・ヤウはそれらを人間として扱い、貴方もそうであると思った。それで一線を越えた貴方が蛇の手に所属したのだ、と私は考えています。

次席研究員シンプソン: <泣き出す>くそ……うう…

管理官メイ: どうやってそれを?

エージェント・オコナー: 確信が有るわけではありませんが、そうだと辻褄が合います。私が包丁について言及すると、彼は非常に慌てふためいていました。そして、それを皿洗い機の中に見た事を覚えていました――彼にとっては予期せぬ出来事だったのです。殺人事件後、彼には急の個人的な会合の用事が有りました、サイト付近に不可解な侵入口が発見されたのと同じ日です。それは彼の脱出経路だったのです。彼は、SCP-5002を、あるいは更に別のスキップをも脱出させ、翌朝の混乱に乗じて失踪するよう命じられたのです。

D-4986: じゃあ、何でこいつが奴を殺すんだよ?

エージェント・オコナー: 貴方は夜まで待っていたのでしょう、マイケル。兵士ロウリーの午前2時の煙草休憩は誰でも知っていますし、貴方は彼がSCP-5002のセルのドアを揺らして通り過ぎる事を知っていました。それが合図だったのです。貴方は厨房から包丁を盗み取り、キーカードの複製を用いてチャンバーを開けた。勿論、警備記録には証拠が残りますが、その時には既に遠くに逃げているつもりだったのです。

ドクター・グロッセンバッカー: でも、そんな物無かったわ。

エージェント・オコナー: それについて言うところです。貴方はSCP-5002に護身用として包丁を渡しましたね、マイケル? そして、兵士ロウリーが戻ってくる前に脱出しろと。しかし、彼女は逃げなかったのでしょう?

次席研究員シンプソン: ああ。そうさ。彼女は拒絶した。

エージェント・オコナー: 理由も言ったと思いますが。

次席研究員シンプソン: そうだ。許してください、カレンさん。僕が説得を続けると、彼女は――ここに留まっていたいと。ドクター・ヤウと寝ているからと。

エージェント・オコナー: その通りです。

<一同ざわつく>

エージェント・オコナー: 静かに! 静かに、皆さん。まだ言う事が有ります。マイケル、SCP-5002がそう言うと貴方は収容チャンバーを立ち去りました。貴方は困惑し、自室に駆け戻りました。それで包丁を置き忘れたのです。

次席研究員シンプソン: ああ、その通りだよ。

エージェント・オコナー: SCP-5002はその晩にドクター・ヤウと寝ていると言ったのですか? そうなのですか、ドクター・ヤウ?

管理官メイ: カレン!

ドクター・ヤウ: お前には分かりっこない。エマと私は愛し合っていた。あれほどの女性を。

エージェント・オコナー: 研究の進展を遅くして、エマを近くに留めたかったのですね。彼女と関わっていくらくらいになりますか? 三ヶ月か四ヶ月といったところでしょうか? 前もってカメラ系統を改竄して、彼女が毎晩セルに一人切りなようにに見せるには十分な時間でしょう。奇遇にも――これほど監視映像を眺めたのは、ジャック・ダニエルの酒瓶の出所を突き止める為でした。

兵士ロウリー: くそ。

エージェント・オコナー: そして、貴女は警備システムに侵入し、中央に送られる前に自分のキーカードの記録を消した。殺人事件の朝に管理官を呼ぶのに時間が掛かったのはその為だと思われます。マイケルがSCP-5002のセルを開けたところを見て、自身の秘密を打ち明けて彼を告発するか勘案していたのかもしれません。

ドクター・ヤウ: 彼がセルを開けるのを見たわ。でも彼がエマを殺せない事は分かっていたの。彼と話したかったけど、時間が無かった。

エージェント・オコナー: あの夜、もう少しで貴方達は鉢合わせするところだったでしょう。兵士ロウリーがシフトを始めるまで、貴女はエマと共に収容チャンバーに居ました。貴女もマイケルと同じく、彼がドアを午前2時に揺するのを聞きました。それが立ち去る合図でした。貴女が自室に戻ると同時に、マイケルは自室を飛び出しました。彼が包丁を取りに厨房に行っている間にすれ違ったのかもしれません。

D-4986: そんで、こっちの女が後で戻って寝ている売女を刺したってのか?

エージェント・オコナー: そうではないと思います。痴情の縺れは殺人にもってこいな動機です。が、SCP-5002は寝ている間に刺されたわけではありません。刺し傷の周囲だけでなく、寝間着全部に血痕が付着しています。

ドクター・グロッセンバッカー: 確かにそうね。

エージェント・オコナー: 目が覚めている時に殺された可能性が高いでしょう、それでその後シーツに包まれながらベッドに運ばれたのです。ところで、皆さんお忘れになっていませんか。ドクター・ヤウが警備記録を削除した時に見過ごした物です。

兵士ロウリー: やっと本題か?

ドクター・ヤウ: それってどういう?

次席研究員シンプソン: 僕が立ち去ったとき、セルのドアをロックしなかったんだ。

エージェント・オコナー: その通りです。包丁を置き忘れたのと同じく、貴方は走り去る中でそれを忘れていました。私のインタビューでそれを理解するまでは。そして、それで答えが分かったようですね。

管理官メイ: 一体全体、答えとは何なのです?

エージェント・オコナー: マイケルとドクター・ヤウそれぞれの移動の合図とは、煙草休憩の後に兵士ロウリーが収容ドアを揺する事です。兵士ロウリーは毎回横切る度にドアを揺らします。行き来の両方で。

ドクター・ヤウ: <息を呑む>ああ。

エージェント・オコナー: 休憩から戻った彼がドアを揺すると、それは開きました。それで中に入ったのですね、兵士?

管理官メイ: 答えなさい。

エージェント・オコナー: 少々酔っ払っていた貴方はSCP-5002と口論を始めました。

次席研究員シンプソン: 兵士ロウリー?

エージェント・オコナー: そして彼女は言いました。彼女とドクター・ヤウの関係について。

ドクター・ヤウ: ジョー?

エージェント・オコナー: 彼女はそれを自慢し、貴方は我慢できなかった。包丁を手に取り、貴方は――

兵士ロウリー: あの女みたいだな、お前は? 随分賢く気取るじゃないか! 自分の方が上だと思っているんだろう、お前は大学を出て俺は夜勤の門番だ。彼女は俺を愛してくれるはずだったんだ! あんな異常なアバズレじゃない!

ドクター・ヤウ: ジョー、何を――<すすり泣く>

エージェント・オコナー: 彼を気に入っていたのは知っています、ドクター・ヤウ、ですが貴女は親切過ぎました。彼の心理評価記録の問題を誤魔化しましたね。彼の飲酒癖を知っていたのかもしれませんが、貴女の彼に対する配慮の数々が彼の恋心を育んでしまったのです。

兵士ロウリー: うるさい。黙れ、このアマ。

エージェント・オコナー: 衝動的とは言え、彼女を殺した後に貴方がやった事は皆、無謀ながらも賢明な判断でしたよ。エマが監視カメラの改竄について話したのでしょう、貴方は自分が写っていないと分かっていました。セルを出て、包丁を皿洗い機に入れ、警備室に戻って静かに朝を待つ。自分がD-4986の死体を"発見"した立場であるのを確固たるものにする為、ドクター・ヤウのキーを借りてドアがロックされていなかった事実を隠蔽する。ドクター・ヤウが保身の為にドアの記録を消すかは賭けでしたが、これは彼女を守るつもりだったのかもしれせんね。そして、死体を慎重にひっくり返し、衣服に付着した血痕の口実にさせ、その後は現場を見張って自身の安全を図ったのです。

管理官メイ: セキュリティーを呼んでも良いでしょうか。

エージェント・オコナー: ジャック・ダニエルを置き忘れたのは失敗でしたね、言うまでもなく。ですが、容疑を向かせたくなかったために、さっき自暴自棄に振る舞っていたのです。

D-4986: ざまみろ、ロウリー!

エージェント・オコナー: 悪運もここまでですね。他の出来事に貴方の行いが埋もれかけていました。ですが、実のところ今回の事件の解答は、極めて単純な手口と極めて古典的な動機によるものでした。

<ドアが開く>

不詳: 要請はこちらからですか?

管理官メイ: この男を殺人の容疑で拘留してください。

エージェント・オコナー: どうぞ、兵士。

<記録終了>



SCP-5002 調査 ― 最終報告 ― その後

報告者: エージェント・エレン・オコナー

日付: 2019年12月24日

調査に関してその後も熟考を重ねたが、私の結論が正しいものである事を祈っている。兵士ジョセフ・ロウリーがSCP-5002の殺害犯であるという考えは変わらないが、財団には寛容な判決を推奨したい。つまるところ、兵士ロウリーが殺人の咎を受けるべきか私には確信が無いのだ。

今回の件は極めて複雑であり、関係者の多くが自身の行動を認めている一方、SCP-5002が関与したのか、という問いが残っている。SCP-5002の異常性が彼女の殺害に繋がったのかという重要な問題が未解決のままなのだ。

基本から始めよう。SCP-5002のセルのスクラントン現実錨は起動しており、収容チャンバー内の異常性発現を防いでいた。同じく、SCP-5002の小説で12月14日の事件に対応する物は存在しない。

だがそれでも、SCP-5002の収容室内に残された、穴を模様状に開けられた白紙のページの存在が、私には心残りである。SCP-5002の小説に関する調査が進行すれば、これが格子暗号――つまり、特定の単語だけを残して新たな文章を作成する――だと判明する可能性が有る。その新たな文章がSCP-5002に読まれ、異なる作用を引き起こしたのではないか? 実験ログが示すところではその可能性は残っている。これを最優先に調査すべきだ。

今後しばらくも、現実改変アノマリーを感知するのは凄まじく困難であろう。この報告書の未来の読者は最善の方法を採用できているかもしれない。私の製作物は貴方が期待通りの構造をしているだろうか――まず結論の要約が有り、そしてそれらを肯定する証拠、という? それとも物語られる口調なのか?

私の仮説が事実ならば、兵士ロウリーに責任は無い。エマ・ヘイスティングスの死は実質的に自殺だからだ。この事は答えよりも問いを生む。SCP-5002の自害の動機は? ロウリーに自分を殺させたとして、ドクター・ヤウが彼女を愛させたのか? 管理官メイに彼女を憎悪させたのか? その連鎖はどこまで続いているのか?

私が生まれのたのはSCP-5002がまだ四歳にも満たない時だった、無論彼女はまだ小説など書いてなかった。ジョセフ・ロウリーはSCP-5002より10歳も年上だ。私は自分の人生が自分のものだと信じている。自分の選択と自分の思考が有り、それは与えられたものではないと私は信じている。読者よ、貴方も同じように考えていて欲しい。

私について、そして貴方自身について。




page revision: 9, last edited: 19 Feb 2020 01:50
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