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nn5n: scp-1958 空飛ぶ魔法のバス
SafeSCP-1958 空飛ぶ魔法のバスRate: 391
SCP-1958
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回収された打ち上げ前のSCP-1958の写真

アイテム番号: SCP-1958

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: サイズの小ささと地球からの長大な距離により、SCP-1958は現在、財団の直接的関与なしで事実上の自己隔離状態にあると見なされています。SCP-1958が観測されたことを察知し、その組成及び軌道に関する情報が出版されることを阻止するため、財団は専門家及びアマチュアによる天文関連出版物の監視を行っています。

20██/██/██、三名からなる財団月面施設2-Aの調査チームが、SCP-1958に到達及び侵入し、積載物のリスト作成及び監視装置の設置に成功。同時に各種成分が回収され、遺物は注目に値すると判断されました。

説明: SCP-1958は、195█年製フォルクスワーゲン タイプ2サンババス(しばしば"マイクロバス"と呼称されます)で、現在は太陽からおよそ1.4天文単位(2.08億km)、火星軌道に近い惑星間空間に存在しています。20██年に財団が監視を開始して以来、SCP-1958はおよそ時速130kmの等速で太陽から遠ざかっています。車体下部の冷却水管が破断しているのと、リアフェンダーに小さなへこみがあるのを除けば、重大な損傷を受けているようには見えません。SCP-1958の側板には、"星間自動車"と"待ってろアルファ・ケンタウリ"という英語のフレーズがスプレーで書かれています。解析の結果は、SCP-1958の軌道は、およそ3720万年後には恒星アルファ・ケンタウリA付近に位置していることを示しました。

SCP-1958は徹底的な販売後改造を受けています。キャビンとエンジンルームは気密化されており、後部ドア付近の小区画はエアロックに換装されています。本来のガラス窓は飛散防止アクリルに換えられており、外部表面はスペースデブリの貫通をほぼ防止する未知の化学添加物で処理されています。燃料区画に置き換えられたガスタンクは、SCP-1958が地球を発った日から数十年後まで発達しなかった[編集済]の高度な理論に基づいていると考えられます。ドライバー用の運転装置あるいはダッシュボードの計器は変更を加えられていません。探査中、調査チームは、ある意味では地球上で運転される車両と同様に、ステアリングホイール・アクセル及びブレーキペダル・シフトレバーがスピード及び方向を変更する機能を果たしていることを指摘しました。

探査により、SCP-1958のキャビン内で次のような遺物が発見されました。

  • 成人男性の白骨遺体。推定年齢21歳。カリフォルニア大学サンフランシスコ校に在籍中、195█年夏に行方不明になったと報告されたウィリアム・███████と身元が判明。
  • 成体で雌のイエネコ(Felis silvestris catus)の白骨遺体。法医学分析の結果は、猫は死亡時に妊娠していたことを示した。
  • 四組の携帯用毛布と枕。
  • 1950年代後半のアメリカ若者文化における典型的な衣類の備蓄。男女混合で数名分。
  • 一部は空になった乾燥食品の備蓄。残存量は成人4名でおよそ3ヶ月分。
  • 尿、糞便、汗からの飲料水リサイクルを意図された化学トイレ及び濾過設備。
  • 排出された二酸化炭素をキャビンから除去し、エンジンの廃棄物として産生される酸素を導入する換気システム。
  • 数千種の在来植物の種子及び数ダースの家畜及び家畜化動物の凍結乾燥受精卵からなる種子銀行。
  • 大麻の残渣が付着した水パイプ。
  • 注射器及び空の薬瓶ひとつずつ。化学分析では、薬瓶と注射器はヘロインの保管及び注射に使用されていたことを示した。
  • SCP-1958のエンジンに加えられた改造に関する青写真及び技術図。
  • アコースティックギターひとつ。
  • ボンゴドラム一組。
  • 印刷物と手書きの星図のセット。
  • 下記の書籍。
    • 『「吠える」と他の詩編』アレン・ギンズバーグ著。
    • 『路上』ジャック·ケルアック著。
    • 『詩集 1934-1953』ディラン・トマス著。
    • 無題の歌集。いくつかのオリジナル楽曲に加え、ウディ・ガスリー、ピート・シーガー、ハンク・ウィリアムズの歌謡の歌詞及びギター・タブラチュアを収載。
    • 『宇宙船ビーグル号の冒険』A・E・ヴァン・ヴォークト著。
    • 『宇宙警察ジャック・プロトン』M.K.シュナイダー著。
    • 『衝突する宇宙』イマヌエル・ヴェリコフスキー著。
    • 『ダイアネティックス』L・ロン・ハバード著。
    • 『宇宙の兄弟たち:銀河系の隣近所へのガイド』アブラクサス"ハニー·チリ"ジャクソン師著。
    • ウィリアム・███████によるものと鑑定された手書きの日記。

SCP-1958が、地球上を出発した手段は不明です。警察の報告や新聞のアーカイブの調査によれば、195█年7月4日の夜、独立記念日の花火展示中に、サンフランシスコ住民によって花火では説明できない"まばゆい光"と"ソニックブーム"が報告されました。███████の旧居は、1975年に新しい建物を建築するために撤去されました。生存していた友人や親戚は、███████を"ビートニク"、つまりカウンターカルチャーのサークルや左翼主義で活発に活動し、新宗教運動、たとえば超越瞑想、インドの神秘家メヘル・バーバーの教え、サンフランシスコの第一・第五教会を道楽半分に次々と渡り歩いた人物と描写しています。

5█/2/3: 今日バスを買った。頭金を作るために、俺たち4人は持ってる物ほとんどぜんぶ質に入れちまった。ジェリーは完璧だって言った-俺たちには十分な広さ、メチャメチャ詰め込める室内。ジェリーは2・3ヶ月もあれば準備できるって言った。でもスーザンは、出発前に卒業したいから夏くらいまで待ちたいって思ってる。まあ時間はたっぷりあるさ。

"異端"とか言ってフィフィストの石頭どもに蹴り出されたのが、まだ昨日みたいに思える。ジャクソンは間違ってる、エッガースは間違ってる、ランドは間違ってる。そう言ったら、連中笑いやがった。魔法は天国にある、ああそうさ-でも俺は、9時から5時まで働いて、天国が来るまで待ってるつもりなんかない。俺たちはやってやる。天国はあそこにある、そうさ、天使を待ってるだけなんだ。

5█/7/4: 打ち上げだ! 宇宙で最初の人間だ! ざまあみろ、フルシチョフ! 今日は独立記念日さ-人類が支配だの法律だの銀行だのを気取り始めてから史上で"始めて"のためのな。俺たち4人は宇宙にいる。これが本当の自由ってやつさ。

メチャ綺麗だ。地球はバックミラーの中でだんだん小さくなってく。誓って言うけど、車は全然動いてない気がする。でもジェリーは時速82マイル(訳註:時速131km)で動いてるって言う。こんなとこで寄ってくるポリ公なんかいやしねえ。ジェリーは言ったよ、アルファ・ケンタウリにつくまで、最高の4人で三週間ってね。俺たちはライトを点滅させて、母なる地球に最後のあいさつをした。

5█/7/7: まだモトローラでAMを聴いてると思ってるかい? 宇宙空間はロックだぜ、すげえ!

5█/7/9: 今日、ビールを飲み尽くした。ビールがたった7本しか残ってないことに気がついたんだ。オリンピアが4本、レイニアが2本、クアーズが1本。そのとき、サムが朝飯のついでにパカッと開けた。俺たちは昼飯のついでに開けてやった-スーザンの飼い猫のミリーにさえちょっと飲ませてやった。出発してから、ミリーが少し太ってる気がする。

ビールがなくなってみんながっかりしたけど、まあいいさ。すぐに着陸して大麦を育てるし、そしたら次の年には俺たちブランドのビールを作るってわけだ。

5█/7/16: ジェリーが死んだ。

みんなで唄ってる間に何かがぶつかった。ジェリーは、たぶん宇宙のチリだろうって言ったけど、外に出て調べてみるつもりだった。あいつはスーザンが作った宇宙服を着込んで、外側を登ってった。戻ってきたとき、また何かぶつかって、あいつは手がかりを失っちまった。ジェリーが漂流しはじめて、スーザンとサムが絶叫した。俺は車を回そうとしたけど、くそっ、ああ、操縦の仕方なんて習ってねえ。下に道路があるときだって、ボートみたいな操縦をするんだ。ようやく捕まえたときには、ジェリーはもう死んでた。スーザンは泣き止まなかった-着いたらすぐに結婚するつもりだったんだ。俺はちゃんと免許を持ってるし、自力でなんとかするつもりだった。車をコースに戻したあと、スーザンが眠れるように薬を飲ませなきゃならなかった。俺たちがもう半ばまで来てるのはいいことさ-もうすぐこの狭苦しいマイクロバスから出られる。そしたら元気も出るさ。

5█/7/19: 朝、俺たちが起きると、スーザンが死んでた。注射針が、まだ彼女の腕に刺さってた。どうやってスーザンがたっぷりヘロインをぶち込めたのか分からねえ-あいつ、マジで一度も触ったことなかったんだ。

サムがスーザンをエアロックから送ってる間、俺はギターでアメージング・グレイスを弾きながら、短く別れを告げた。スーザンはきっと、ジェリーを見つけられるさ。

5█/8/23: おい、なんかおかしい。そろそろ着いてなきゃいけないんだ。でも窓の外にアルファ・ケンタウリなんか見えやしない。進路を間違ったのか? 通りすぎちまったのか? 俺は星図なんか読めない-ジェリーがこのくそったれの専門家で、俺の専攻は哲学なんだ。

サムも俺も、病気にかかっちまったみたいだ。弱ってきたし、身体中に斑点ができてる。サムは食うのがつらいらしくて、昨日は歯が抜けちまった1。猫を何日か見てない。でも、なにかマジで嫌な匂いがする。どこかの後ろをうろついてて死んじまったんだと思う。早く着くことを願ってる。

5█/9/18: サイドウィンドウから月が見える。おい、おかしいぞ。まだ月さえ過ぎてなかったのか? ジェリーのやつ、数学が壊滅してやがる。俺たちは辿りつけやしない。もう帰ることもできやしない。もう一度だけ月を見て、カーテンを全部閉じた。サムに知らせることなんかできっこない-あいつはもう、食い物が喉を通らなくなってるんだ。俺自身、あんまり良くないけどな。

5█/9/23: 俺は、もうひとりぼっちだ。今朝サムが死んだ。

あいつ、最期はほとんど座ることも見ることもできなくなってた。サムが、もう着いたかどうか訊いてきた。俺は言ってやった。ああ、そうさ、明日には着く。そしたらゆっくり休めるさって。本当のことを教えるなんてむごい真似、できるわけないだろ。最期に、ディラン・トマスの"そして死は覇者にあらず"を読むように頼まれた。俺が読み終えたときには、既に目は閉じてた。もう二度と開かない。逝った後、サムの身体をエアロックから押し出した。俺が死んだ後、見送ってくれるやつは誰もいやしない。

5█/11/3:

ああ、星はすげえきれいだ。

ページリビジョン: 2, 最終更新日時: 30 Jan 2016 22:10
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